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SDM Voice|山形 与志樹教授(SDM教員)

SDM Voice|山形 与志樹教授(SDM教員)

長年、気候変動の研究に取り組んできた山形与志樹教授。現在、環境と健康の好循環が生まれる未来社会のシステムデザインに取り組まれています。持続可能な脱炭素化を実現するため、都市の再開発と地方の活性化をバランス研究に、SDMの学生さんに参加してほしいと語る先生にお話を伺いました。

Profile

山形 与志樹(やまがた よしき)

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント教授

1961年神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業(広域システム科学・学術博士)。国立環境研究所を経て現職。GCP国際オフィス代表、IPCC代表執筆者を20年間担当。気候変動対策、生態系サービス評価、建築と交通を統合した新しい都市システムデザインアプローチを提唱。

「環境」と「健康」が好循環する未来社会を目指す

2021年4月から「未来社会共創イノベーション研究室」を立ち上げ、社会課題の解決と新しい価値創造の共創に取り組んでいます。長年の研究経験から、持続可能性の実現には地元の関係者との協働が極めて重要と考えています。特に、気候変動リスクにはグローバルとローカルで対処する必要があること、脱炭素化と気候変動への適応には、都市システムの観点からのまちづくりが重要と考えて研究に取り組んでいます。例えば、墨田区の古い木造密集地域の再開発では、和風スマートシティ構想を提案しました。消防車も入れない地域での再開発は急務ですが、単に道路を拡幅してマンションに建て替えても、結局は車が多く通るだけの通りになってしまう可能性があります。低速で安全にサービスを提供してくれる自動運転のEV車を活用することで、緑地をコミュニティスペースとすることが可能です。ガソリン車の進入を制限し、地域の太陽光発電で充電する自動運転EV車を活用することで、脱炭素でレジリエントなまちづくりが可能です。再開発以前の人と人とのつながりを維持し、新住民との交流を発展させることができる和風のゼロカーボンシティです。

これからは、特にアフターコロナ時代におけるウェルビーングの観点も重視して、「環境」と「健康」が好循環する未来社会の実現を目指して、都市と地域をつないだ新しい動き方、住まい方、移動手段を組み合わせた都市システムのデザインに取り組んで行きたいと考えています。

CO2の可視化でゼロカーボンシティ実現を支援する

今年からゼロカーボンシティの都市計画を支援する「都市地域炭素マッピング」手法の研究をスタートしました。ビックデータとAIの手法で、建築物や自動車からのCO2排出量を動的に可視化しています。将来的には炭素マッピング情報を活用したまちづくりが可能です。ゼロカーボンシティのリーダーとなる、都市と中山間地域の自治体にも応用を広げて行く予定です。また、熱中症リスクの情報も、リモートセンシングデータや携帯位置情報の分析でわかるようになりました。さらに、各種バイタルセンサーを組み合わせて総合的に情報を評価して、あらゆる世代が健康・快適にまちを移動することを支援するナビの開発にも取り組んでいます。

持続可能な都市システムをデザインする

ジョージア工科大学、東京大学と連携した「東京デザインスタジオ、世界と日本を結ぶ湾岸イノベーションハブ品川」プロジェクトでは、品川駅を高輪ゲートウェイ駅や天王洲アイル駅と結ぶ、ベイシティのシステムデザイン提案にチャレンジしています。地下に自動運転EVを大量に配備してオンデマンド配車。移動者にオンデマンドで最適配車するMAASを構築し、この地域内のどこにいても10分で任意の目的地に移動できるシステムを提案しています。地下の大型EV駐車場は、地域発電所として災害時には数日間の地域電力を共有することが可能です

SDMの学生さんはアクティブでポテンシャルに溢れている

SDMには企業の第一線で活躍されている、経験豊かな学生さんが多くいらっしゃいます。都市システムデザインを社会実装するために、企業間連携での新事業提案の発展に期待しています。私が想像していた以上に、SDMの学生さんたちはチャレンジ意欲に溢れています。学術論文を書いて研究者への道に進むだけではなく、研究に基づいたイノベーションの実現があってこそ未来社会を実現することが可能です。地域スケールでの環境やヘルスケア分野での新規事業の提案は、今やどの地域においても喫緊の課題となっています。

多様な会社の技術をシステムとして組み合わせた都市システムデザインの事業構想を、大学院生の皆さんと連携して、私たちのラボから提案できたら素晴らしいと思います。現在私の研究室では、「スーパーシティ構想」自治体と都市システムデザインに取り組んでいます。ゼロカーボンでウェルビーングな都市システム実現に関心がある学生さんの参画を期待しています。システムデザインの新しい手法をSDMで学び、具体的な都市や地域の持続可能な発展に貢献したいと望まれている、意欲に溢れた学生さんとの出会いを大変楽しみにしています。

山形与志樹研究室