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SDM Voice|木下 聡子氏(2012年4月入学)

自動運転車の実現に向けた研究に取り組んでいる木下聡子氏。自動運転車と社会全体の関わりについて、“System of Systems”の概念でビッグピクチャーを描きながら研究をされていることなど、在学生として、入学当初に感じられたこと、また、現在感じていること、将来の目標などについて伺いました。

Profile

木下 聡子(きのした さとこ)

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 後期博士課程在籍

千葉大学大学院自然科学研究科にて代数学を専攻。修了後はソフトウェア開発を担う会社にて、企業のポータルサイト作成・サーバーメンテナンスなどを担当する。離職後、システムデザイン・マネジメント研究科後期博士課程に入学。現在、研究として、System of Systemsのアーキテクチャに対する形式手法を用いた検証に取り組んでいる。

自動運転車の実現に向けた研究

SDMでは現在、西村研究室に所属しており、“System of Systems”という概念の中で自動運転車のあるべき姿について研究しています。自動運転車の研究は世界中の大学で行われていますが、SDMの特徴は、自動運転車と社会全体の関わりについてなど、ビッグピクチャーを描きながら研究できることです。研究は担当教員である西村秀和教授ご指導のもと、8人ほどのチームメンバーと一緒に、社会の受容性を高める自動運転システムとそれを取り巻くSoSのアーキテクチャの設計に取り組んでいます。特に私は、アーキテクチャの検討で、自分たちが記述したシステムモデルが安全性を保証できるか否かを、形式手法を用いて検証しています。システムが並行して動いていく中で発生する関係性や複雑性について論理的に検証するため、コミュニケ―ティング・シーケンシャル・プロセス(CSP)を用いています。

東京オリンピック・パラリンピックが開催される、2020年に自動運転車を実現する目標を掲げ、それに向けて各方面での動きが活発化しています。しかし、どのような自動運転車によって交通システムが安全になるのかについては、必ずしも明確なビジョンを打ち出せていません。そこで、私たちが検討しているアーキテクチャをもとに、ユーザーや自動車メーカーのみならず、政府や保険会社など様々な関係者がコンセプトを共有して、技術面、法令面の話し合いができるようになれば良いと思っています。自動運転車実現の一番の目的は、ドライバーに起因する事故を減らすことです。普通乗用車への適用にばかり目が向きがちですが、私たちの研究チームでは、まずは事故による被害が大きくなり兼ねない、トラックやバスなど大型車のドライバーをサポートするための検討が必要ではないかと考えています。

積極性が求められる研究科

入学当初は、視点の多様性に驚きました。医師や会社経営者、ライターなど様々な職業と年齢の方がいて、同じ授業を聞いているのに自分とはまったく異なる解釈があることに気づかされます。そのことが驚きであり、とても新鮮でした。自動運転車の研究のように社会との関わりも含めて考えていく上で、自分にない視点を持つ必要があることを知り、他の方が持つ多くの知見を得られたことは、想像していた以上にプラスになりました。

入学して4年になりますが、自分からどれだけ積極的になれるかによって、学びの質が変わり、気づきの量にも差が出ると感じています。授業では概念的なことを教わり、事例に当てはめながら手法や適用方法を学びますが、概念的なことをどのように具体化し、研究に落とし込んでいくかは、自分のフィールドにより異なります。システムズエンジニアリングのプロセスを適用しながらシステムを設計していくことがその人の研究であり、仕事なので、たくさんのエネルギーが必要になります。ですから、積極性と“自分で何かを考える力”を持ち、取り組みたい課題や問題を絶対に解決するという強い意志を持った方に適した研究科だと思います。

社会とアカデミックな場の橋渡し役に

SDMは、他では得られないような新しい気づきを得られる、素晴らしい学びの場です。大学の数学科にいた頃は一人で問題と対峙していたので、人とのコミュニケーションがあまり得意ではありませんでした。しかし、SDMではグループワークやブレインストーミングなど、チームで議論する場面が多くあり、コミュニケーションによって自分自身が成長し、フィールドが広げられたことは、とても大きな収穫でした。研究科委員長の前野先生がおっしゃっている、“脳を繋ぐ”という人と人とのコミュニケーションによって生まれる相乗効果の大きさと必要性に、ようやく気づきました。

今後は、システムズエンジニアリングを自分の中に徹底的に叩きこみたいと思っています。包括的に物事を考えるのがシステムのコンセプトであり、研究をさらに広げていくためにも、システムズエンジニアリングを身につけることに注力します。また、4月からはアメリカへ行き、現地で研究者としてのキャリアを積んでいます。研究者といっても、研究室に籠って理論を築き上げるだけではなく、SDMの先生方のように、社会とアカデミックな場の橋渡し役をしたいと思っています。ヨーロッパでは、企業が大学院生を巻き込み、政府の協力も得て一体となってプロジェクトを進めています。日本でもこうした仕組みを導入できる立場になることが将来の目標です。