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SDM Voice|佐竹 麗氏(修士課程2018年4月入学)

2018年春に11期生として入学。交換留学制度でケンブリッジ大学へ留学。就学前は、編集とライティングの経験を積んだ後、医療系のITベンチャー企業でコミュニケーションディレクターを勤めた佐竹氏。研究中間発表のため一時帰国された際に、SDMで学んだ動機や、これからのビジョン、入学を考えておられる方へのメッセージなどをお伺いしました。

Profile

佐竹 麗(さたけ うらら)

北海道大学農学部卒業後、ディスカヴァー・トゥエンティワンで編集に従事。その後、フリーランスで書籍や雑誌、広告、ウェブサイトやコンテンツのディレクター、エディター、ライターとして参画、株式会社メディ・ウェブでコミュニケーションディレクターを務める。大学院の研究テーマは、「隣で晩ごはん(仮)」のシステムデザインーご近所さんとのつながり向上に向けてー。近所に住む人たちを楽しくつなげながら、より安心して楽しく過ごせる生活の基盤構築に寄与する仕組みの構築を目指している。

自分の中のストッパーを外してSDMに進学することを決意

SDMへの入学を決めるきっかけとなったのは、娘の高校入学でした。我が家は、夫婦ともに実家が遠く、親を頼ることができなかったので、様々な人生の選択を迫られる時に自分のことよりも子どものことを優先する必要がありました。家庭を大切にすることはもちろんよいことですが、その反面リスクを冒さないことへの言い訳にしている部分もありました。私の娘の中学卒業が近づいてきた時に、子育てがひと段落することが視野に入りました。その時に、「もう子育てを言い訳にするのはやめよう」と決め、自分も楽しみながら培ってきた力を発揮し、社会や周囲に貢献できることをしたいと、自分ができることは何だろうと模索し始めました。その中で、書籍を参考にワークをしたり、思いを巡らせたりするうちに「ご近所さんを楽しくつなぐ仕組みを作る」ということにたどり着きました。都心に住んでいると、ご近所とも挨拶しづらい空気があったりします。自分を含めて、そのような中で年を重ねていくことに漠然と不安を感じている人が結構いるのではないかと考えました。そこから導き出されたアイデアが、「気が向いた時に、気が向いただけ誰かの役に立つことができる、その行動によってちょっとだけ社会を良くする仕組み」でした。このアイデアを実現させることによって、ご近所さんを緩やかにつなげていけるのではないかと考え始めました。どうせなら大学院でしっかり学び、今後につなげたいと考え「社会システム」を学べる大学院を探してSDMにたどり着きました。もちろん、大学院入学を決意することは簡単なことではありませんでしたが、入学相談の際に担当していただいた先生が、私のアイデアに共感してくださり「ぜひ一緒にやろう!」と言ってくださったそのひと言に勇気を得て、自分の中のストッパーを外すことができました。

"システム"を学ぶことで得たかったこととは

システムを学ぶということは、限りあるチャンスを生かし、より良い結果につなげる可能性を高めることだと私は考えています。ITベンチャーに勤めていた際に、開発サポートに入る機会がありました。エンジニアたちはディスカッションをしながらダイアグラムを描き、やりたいことを共有し、うまくいかなかったら課題を洗い出して改善策を検討し、作りたいものを形にしていきます。彼らは、そのためのコミュニケーションはとてもスムーズだったのです。しかし一方で、経営やマーケティングとなると、途端にコミュニケーションが難しくなるのです。一人ひとりの言葉の定義が違ったり、ゴールの認識が違っていたりしました。結果的にPDCAを回して、全体を改善するために膨大なエネルギーが必要になります。当時の私は、現場で最善を尽くしながらも、自分の中に明確な裏付けや拠りどころのない心許なさを感じていました。これらのことを、大学院に行き克服したいと考えていました。また、社会システムについて学ぶことで生きたシステムを生み出し、育てていくための様々な視点や手法が得られることを実感しています。その手法を使いこなすことは簡単なことではありませんが、仮説が間違っていても得られた結果を基に改善すればいいという安心感を持って前に進むことができます。
現在、ケンブリッジ大学をベースに2018年にイギリス政府が策定した「A connected society - A strategy for tackling loneliness -」についての調査を行っていますが、その中でも、システムを俯瞰的に理解する力を身につけることの重要性を実感しています。

頼れる仲間に恵まれた贅沢な環境

SDMに来て本当によかったと思うのは、多様かつ専門性の高いさまざまな方と出会えたことです。同期、先輩、先生方が皆、親身に相談に乗ってくださいます。時にはざっくばらんに、時には高度な専門性を武器に建設的なアドバイスをしてくださいます。なんともありがたい贅沢な環境だと思います。また、SDMは惜しみなく自分の力を使い切ることができる場だと私は思います。日頃どこか周囲に遠慮したり、気を遣って見えない枠からはみ出さないようにと自分を抑えてしまったりすることがあるかもしれませんが、SDMでは気兼ねなく学びたいことを存分に学び、発信することができます。それに対して、周囲からもポジティブなフィードバックをいただけます。その一方で悩ましい点もあります。それは、魅力的な授業や活動が多すぎて、ついあれもこれも参加し学びたくなってしまうことです。しかし現実、仕事をしていると時間が限られていて、課題も内容が濃くボリュームもすごくある授業も多いので、課題を終わらせることができなくなれば本末転倒になってしまいます。なので欲張りすぎないことをオススメします。そして、SDMの受験を検討されているのであれば、決める前に志望動機をとことん磨き込んでみることをオススメします。やりたいことが明確であればあるほど、一人で学ぶより何倍も効率よく豊かに、次のステップに進むための必要な力を身につけられると思います。私もSDMで学んだことを生かし、今は夢の実現に向けて着実に歩んでいます。