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SDM Voice|野中 朋美氏(後期博士課程2010年4月入学)

SDMでの経験を通して、自身のキャリアを大きく変化させた野中朋美さん。大学卒業後、OLとして働いていた彼女に、どのようなチャンスが訪れ、それをどのように掴んでいったのでしょうか。今は、青山学院大学の助教としてアカデミアの道を歩む、野中さんに伺いました。

Profile

野中 朋美(のなか ともみ)

青山学院大学 理工学部 経営システム工学科 助教(2010年3月修士課程修了、2012年3月後期博士課程修了)

慶應義塾大学環境情報学部卒業後、企業勤務ののちSDMに入学。神戸大学大学院システム情報学研究科特命助教を経て、現職。専門分野:生産システム工学、サービス工学。従業員満足や生産性などの人の情報を起点とした生産システム設計の研究に従事。現在、食サービスを対象に持続可能なサービスシステムデザイン研究に取り組んでいる。

SDMで起きた想定外の化学反応。人生の転機に

私がSDMに入学したのは2008年。今思えば、それが大きな転機になりましたね。SDMをきっかけに、自分ですら想像もしていなかったようなキャリアパスが始まりました。

もともとは、慶應義塾大学の環境情報学部を卒業後、不動産関係のベンチャー企業に就職しました。そこで、WEBマーケティングの担当として、自社サイトへ顧客を誘動するためのサイト設計や広告企画などの業務にあたっていました。そのうち、上長の秘書業務も担うようになったのですが、そこで実業をバリバリこなしている人をサポートする面白さに目覚めてしまい、秘書としてもっとステップアップしたいと考えるようになったのです。そんな時、偶然SDMという新しい研究科が出来るという情報を知り、スキルを高めたい、将来秘書として雇ってもらえるような人と知り合いたいと、思いきって入学を決めました。会社に入って4年ほど経った頃のことです。

SDMでは、本当にたくさんの出会いに恵まれて、自分でも思ってもみなかったような"化学反応"が起きました。その結果、今は、かつて自分が目指していた"秘書"ではなく、"青山学院大学 理工学部 経営システム工学科の助教"をしています。現在の専門は、生産システム工学・サービス工学。受け持っているのは、生産管理や最適化技術実験、プログラミングなどの学部生対象の授業です。OLとして企業で働いていた私が、今はアカデミアの、しかも理系の道を歩んでいるなんて、自分でも驚いてしまいますね。

交換留学制度の一期生として、海外へ

SDM在学中は、持続可能な生産システムの研究をしていました。具体的にお話しすると、当時ハイブリッドカーや電気自動車が本格的に販売され始めた頃だったのですが、それらを効果的に普及させるために、環境、経済、社会の多視点からの評価モデル構築と将来シナリオ分析を行っていました。社会システムと生産システムを扱う研究です。今の専門にもつながっています。

でもなんといっても、自分のキャリア形成に最も大きな影響を与えたのは、SDM在学中の留学経験です。実はそれまで、英語には一生触れない人生を歩もうと思っていたくらい英語が苦手だったのですが、入学してから一変しました。これでもか、というくらい英語を使う機会が多かったのです。そこへきて、SDMの交換留学制度が始まりました。留学はもっと英語ができるようになってから、と思っていたのですが、「躊躇せず、まずは行ってみなさい」と教授に背中を押され、思い切って一期生としてデルフト工科大学(オランダ)に留学しました。2009年のことです。その後、ミラノ工科大(イタリア)への短期留学を経て、博士課程学生になった後、2011年にはスイス連邦工科大学(スイス)留学、研究員として2013年にはマサチューセッツ工科大学(アメリカ)に短期インターンシップ滞在をしました。

海外では、衝撃的な経験をたくさん積みました。最初に、ある先生に「あなたは何がしたいのか。教授である私に何を望むのか」と迫られて、指導してもらうという受け身の姿勢ではまったく通用しないことを思い知らされました。ヨーロッパではそれが当たり前で、積極的で意欲的な学生に囲まれて、本当にカルチャーショックでしたね。でもその経験の影響はとても大きく、授業や研究はもちろんですが、学ぶ意欲や向き合う姿勢といった部分でも得るものは大きかったです。今の自分に活きています。

未来を拓く糧であり、未来の自分の礎にもなる

私は、「垂れてきたチャンスの糸を掴めるかどうか。それが勝負」というのを大事にしています。長期的に戦略を考えたり、ビジョンを持って取り組むというよりも、いい意味で"いきあたりばったり"で、目の前に現れたチャンスを掴むことに一生懸命になるタイプかもしれません。それがSDMにきてから、チャンスの糸が垂れてくる頻度と幸運さが、格段に上がったような気がしています。教授陣はもちろん、学生も含めて、たくさんの多様な人との出会いが豊富だからでしょうか。その方々と背中を押しつ押されつ刺激しあいながらの毎日が、とてもプラスになったのだと思います。修了した今でも、同級生と連絡を取り合っていて、それが新しいチャレンジや発見につながっています。

そういう意味で、SDMは自分の可能性が開ける場所であり、自分の拠り所にもなる原点かもしれません。ここでの経験は、未来を拓く糧にもなるし、未来の自分の礎にもなるというか...。現在は、食サービスに関する研究プロジェクトに取り組んでいます。社会実装に向けて、SDMで学んだことを生かしてチャレンジしています。私の場合は、30歳を前にして、がむしゃらに働いてきた自分のキャリアに迷う瞬間がありました。それが、SDMで博士号を取得して大きくキャリアを変えるきっかけを掴むことができました。周りの知人や友人と話すと、特に同世代の女性に将来のキャリアに対する悩みを持つ人に多く出会うことがあります。男女問わずですが、そういう方にとって、SDMは、たくさんのチャンスが見つかる場所だと思います。私もここで、新しいことにどんどんチャレンジすることができましたし、新しい自分に出会えました。今でも、何か新しいことをしようと思った時には立ち戻り、帰ってこられる。ここは、そんな大切な場所です。これからも、たくさんの方にとって、そういう素敵な場所であってほしいですね。私も、これからもチャレンジを続けたいと思います。