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SDM Voice|加藤めぐみ氏(2017年4月入学)

京都大学大学院、KBSとすでに2つの大学院を修了していた加藤さん。SDMで学ぶことで、3つの学びがつながり、人生を広げることになったといいます。55歳から社会貢献をしようと漠然と考えていたものが、今すぐにでもできることをイメージできるようになったのは、物事を俯瞰して見られるようになったからかもしれません。

Profile

加藤 めぐみ(かとう めぐみ)

京都大学大学院農学研究科修了後、日本イーライリリー株式会社にて医薬品開発に従事し、現在は糖尿病領域のプロジェクト・マネジメント担当。途中2年間は仕事を離れ、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)にて学ぶ。KBS在学中に長男を出産し、2005年修了後復職し現在に至る。フルタイムで共働きをしながら子育てをするという時間的制約がある中、家庭を家族の望む形にマネジメントするのにKBSで学んだ思考やスキルが有用だと考え、”家庭のマネジメント”を研究テーマとして選び、2017年システムデザイン・マネジメント研究科に入学、2019年3月修了。

「大学院での学び」を仕事に活かしたくて

京大大学院を出た後、神戸に本社のある米国系製薬会社に入社しました。米国系企業は基本的にニーズや利益などのバランスによって意思決定をしますから、私がいいと思った提案が社内での優先順位が低いというビジネス上の理由で却下されることもしばしばでした。理系で生きてきた私は、科学的に正しいことが正であると思っていましたから、そうした状況に納得できないところがありましたね。

そんな時に、夫が東京に2年間赴任するという。2年ならちょうどいいタイミングだ、より良い薬の開発のためにビジネスを学びたいと思い、いったん退職してKBSに入りました。 KBSでは、会社組織を俯瞰的に見る知識、そして意思決定のための思考力を学びました。とても刺激的で学びの多い時間でしたが、2年生の4月頃に妊娠していることが分かったため、2年目は必要最小限の授業と修論研究のみで、満足のいく活動ができませんでした。なんとかKBSは修了しましたが「やり残した感」があり、周りに対して胸を張ってMBAを取得したとはいえませんでしたね。

KBS修了後は、元の会社に復職しました。入学時点では会社にまだ休職制度がなかったため退職しましたが、戻りたくなったら戻れるよう上司が人事部の許可を得てくれていました。子どもが生まれたばかりでしたし、2年間の転勤のはずの夫がそのまま東京で仕事をすることになったため、元の職場に戻るのがベストと判断したのです。

とはいえ、主となる開発業務は神戸で行われていましたから、基本的に仕事はテレワーク。医薬品の開発業務はサイエンス系の修士や博士ばかりで、ビジネススクールの出身でMBAを持っている人はほぼゼロ。私は元いた場所に戻ったという感じでした。MBAを持っているからという理由で仕事がアサインされることは特になかったですが、テレワークで子育てしながら働く上で、KBSで学んだマネジメント・スキルが仕事でも家庭でもとても役に立ちました。

55歳からの人生を考えてSDMへ

大学院を出て、KBSにも行った私が、なぜまたSDMに入ったんだと、皆さん思いますよね。
SDMに入った一番のきっかけは、40歳を目前に、15年間の仕事を振り返り、自分のこれからの人生や仕事について深く考えたことです。早期退職制度が利用できる55歳までに老後資金を貯め、退職後はお金に関係なく社会貢献をしようと思いました。しかし、それには今後の15年間で何をするかが問題だとも気が付きました。55歳になっていきなりNPOに入って、「私が前にいた会社ではこうでした」などといっていたら老害にしかならない。あれこれ思い悩んでいたタイミングで、開発部門の友だちが社会人大学院に通い始め、としても楽しいという話を聞くようになったのです。うらやましいなと思いましたし、私も55歳に向けてブラッシュアップするため、もう少しインプットの機会を増やしたいと思いました。とはいえ、今さら大学院か、大学院は2回も出ているしと、迷ったのも事実です。

そこで、まず2つのことにチャレンジしました。ひとつはプロボノです。仕事で使っているプロジェクト・マネジメントスキルが外の世界で使えるかどうか、力試しをしてみようとボランティア組織に入りました。ボランティア組織は会社組織と比べコミュニケーションコストが非常に高いけれど、やっていることは仕事とあまり変わりませんでした。これならいけそうだ、とわかりました。

もうひとつは、デザイン思考研究所で開催されたデザイン思考を学ぶ集中トレーニングコースへの参加です。これまでも、経営分析のためのフレームワークは色々学んでいましたが、それとはまったく違うふんわり柔らかいデザイン思考に惹かれました。

ただ、数日の集中講義だけでは身に付いた感じがしません。もう少し勉強したいと思い、SDMが主催していたシステムxデザイン思考の1日ワークショップに参加したのです。驚いたのは、参加者たちのテンションの高さ。なんだろう、このテンションの高い人たちは、と思いましたね。そのうえ、私より明らかに年上のSDMの在学生という女性が参加しておられ、これなら私もありかも、という気になりました。

SDMでの研究テーマは、自分が一番ワクワクして取り組める「家庭」にしようと考えました。基本的に家庭も組織です。在庫管理も人材開発も財務管理も会社と同じ。ただスケールが小さいだけ。ビジネススクールで学んだマネジメント・スキルを、家庭のマネジメントに適用できれば、幸せに暮らせる家庭が増えるのではと考えました。SDMの説明会で、前野隆司先生に家庭マネジメントはSDMの研究のトピックになりますかと伺ったら、大丈夫といわれて入学しました。

SDMでは、やりたいことは全部やった

SDMはとても居心地が良かったですね。

理由は、2つあります。ひとつは、SDMでは目的と要素のつながりでシステムを捉え、今までに解かれていない社会課題をシステムで解くことを目的とするため、課題やシステムに目を向けることが重要で、「1番になること」は必ずしも求められていないこと。

もうひとつは、研究対象とするシステムが学生それぞれ違うことです。私のテーマは家庭でしたが、地域活性の人もいれば空飛ぶ自動車の人もいて千差万別でした。ですから、あなたのもありだけど私のもあり、とお互いの関心を認め合い、面白がれることが楽しかったのです。

それまで私は、自分の興味のあるところ以外にはとても出無精でしたし、関心の範囲が“日々の暮らし”と、とても狭いものでした。けれど、SDMに行くと、自分が今まで触れてこなかった地域の問題や宇宙の問題についてみんなが本当に楽しそうに話している。これは視野を広げる大きなきっかけとなりました。しかも、複雑な現象を「システム」として捉えてひも解くという考えのおかげで、どんな対象でもひとつひとつのつながりを俯瞰的に構造的に面白がって見られるようになったと感じています。SDMではやりたいことは全部やったと自信を持っていえます。

SDMに入る前は、55歳になったら人の役に立ちたいとぼんやり考える程度でしたが、今は具体的にしたいことのイメージがたくさんあります。SDMで研究した家庭のマネジメントについて、会社の後輩を集めて勉強会をやったり、色々なワークショップのファシリテーションをしています。それから、教育問題にも関心を持つようになりました。私の息子は中学生になりましたが、彼の成長を見守る中で、子供がそれぞれ伸び伸びできるような場をどう作るかも、自分の大事なテーマの1つになりました。この問題について、学校の先生と対話することもあります。こうしたことを通じて、会社以外の人、SDM以外の人とも繋がる機会が増えた結果、自分の中の軸ががっちり築かれつつあります。

SDMは次の人生を広げたい人の学びの場

人にとって「学び」の場はたくさんあるし、いつでも取り返しがきくと思っています。大学院もその1つ。SDMは視野を広げたいとか、自分を変えたいとか、問題意識を持っている人はもちろんですが、新しいことを学んで自分の次の人生を広げたいという人にもいい場所だと思います。
私はSDMでの2年間、ずっと楽しいと感じていましたが、もちろん大変な点もありますよ。企業などと連携して新しいアイデアを創り出す「デザイン・プロジェクト」には、時間も気持ちもコミットが必要になりますし、授業のレポートを書くとか、研究をしっかり作り上げることも簡単ではありません。苦労した同級生も少なくなかったと思います。

でもSDMでは、1人では絶対得られないような、また、会社でも得られないような多様な視点と学びが得られます。
学びはいつでも取り返しがきくし、大学院もその1つ。私は、子育て中の働く女性に「SDMに入学したいけど、やっていけるでしょうか」と、よく聞かれます。私の答えは、「やり方次第」。大学院と仕事と家庭をどうマネジメントするか、です。「子供が小さいから行きにくい」と相談を受けた際も、「入学したかったら、絶対そうした方がいい!」と背中を押していますよ。