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SDM Voice|神武 直彦准教授(SDM教員)

ここまで、SDM Voice インタビュアーとして11名の専任教員にさまざまなお話を伺ってきました。最後に私、神武直彦の考えもお話しさせてください。創設10年を迎えたSDMの魅力とは何か、SDMが最先端であり続けるためにはどうしたらいいのか、私なりの考えをお話しします。インタビュアーは前野隆司研究科委員長にお願いしました。

Profile

神武 直彦(こうたけ なおひこ)

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科准教授

宇宙航空研究開発機構、欧州宇宙機関を経て現職。 専門分野:宇宙システムから街づくりまで社会技術システムのデザインとマネジメント。アジア工科大学院招聘准教授。日本スポーツ振興センターハイパフォーマンス戦略部アドバイザー 著書:「エンジニアリングシステムズ」(慶應義塾大学出版会)「位置情報ビッグデータ」(インプレスR&D)など。「社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」のデザインで、グッドデザイン賞2017を受賞。

システムデザインには、客観的データと主観的なデータの両方が必要

もともとロケットや人工衛星を開発する仕事をしていて、その時から、その活用にさまざまな可能性を感じていました。そこで今は、人工衛星を含むさまざまなセンサーからのデータを活用した課題解決に取り組んでいます。海外での大規模農業やまちづくり、防災、スポーツなどが研究テーマです。SDMに参画してからは、センサーで取る客観的なデータだけでなく、実際に課題を持っている方と共に過ごしたり、ファシリテーションや、オブザーベーションを行ったりと、その方々との直接的なコミュニケーションを通して得る「主観的かつ客観的なリアルデータ」を組み合わせて課題解決に臨んでいます。課題解決のためのシステムデザインを考えるとき、客観的なデータに、フィールドワークでわかるリアルな情報を組み合わせると、その課題を抱えている個人やコミュニティの課題を具体的かつ緻密に理解できますし、より価値のある解決策を生み出せることを実感しています。

たとえば今、日本ではスポーツが一つのキーコンテンツになっています。2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・ パラリンピック、そして2021年の関西ワールドマスターズゲームズと、3年間連続で、日本で大きなスポーツイベントの開催を控えているというのが大きな理由です。ニュースなどではスポーツというと、メダル数の獲得やトップアスリートの育成などが議論されがちですが、スポーツは地域コミュニティのつながりや一般の生活者のヘルスケア増進につながるなど、いろいろな課題解決に資するので、俯瞰的な視野が必要だと思います。そういった複数の要素が組み合わさる仕組みの全体最適を考える際、SDMの出番があります。スポーツ分野においても、SDMに期待されていることは多いと感じています。最近は、元トップアスリートやスポーツに関係している企業や地方行政の方からの入学希望や問い合わせがとても増えています。

多様性こそが、SDMの価値

SDMには、本当に多様な学生、研究員、教員がいます。それが一番の面白みではないでしょうか。さまざまな国籍、年齢、経歴の人たちが、ここではその立場を超えて出会い、混じり合い、議論をする。たとえば、安全保障に関わっている学生とオリンピックメダリストの学生が出会うと、まったく違う分野の専門家同士なのに、「いかに一回の機会で結果を出すか?」という日頃取り組まれている“共通点”で意気投合して白熱した議論を交わし、新しい取り組みが生まれるのです。まさにそういう、化学反応が起きて新しいことが誕生する現場に居合わせられるという幸せや面白さが、SDMにはあります。そういう場に立ち会えることで、非常に多くの学びがありますね。そういう意味では、新しいことを生み出したい、社会をつなげて価値あるムーブメントを起こしたい、そのためには日本を飛び出すことも厭わない、というような熱意と行動力を持った学生に、もっともっと来ていただきたいです。年齢も国籍も経歴も問いません。多様性がSDMの価値だと思っています。SDMとは、そういう場であるべきなのです。年齢も国境も立場も越えて、あらゆる課題に取り組むための独自の方法論を提供し、そのための人材が揃っている場。それがSDMです。

一方で、多様であるがゆえに「SDMとは何か?」ということを世の中にはっきりと伝えきれてないというのが今の課題だと感じています。在学生ですら「真のSDM」を十分に理解していないのでは、と思うこともあります。「これがSDM」というのを理解していただくには、これまで以上に多くのSDMならではの事例を生み出していくことが近道だと考えているので、一層邁進したいです。

これからも最先端であり続けるために、より多くの人を巻き込みたい

SDMも創設から10年を迎えました。SDMという考え方は、当時まさに最先端でした。10年経った今、これからも最先端であり続けるには、10年前のコンセプトは大切にしながらも、変わっていかなければいけない部分もあると思っています。たとえば、講義については、世界中どこでも受講でき、議論できるような仕組みを取り入れたり、そもそもの規模を拡大したりといったことも必要でしょう。また研究においては、より多くの人や企業と積極的に協調し合って、国の政策に貢献するプロジェクトを推進したり、あるいは新しいサービスを創り出したり、SDMの多様性を生かしてさまざまなことに臨みたいと思っています。教員や研究員がそれぞれの分野における第一人者でありつつ、その分野の専門性を掛け合わせてお互い学びあい、SDMのプロであることを目指す。そしてプロとして、より多くの人を巻き込むことで、SDMの考え方そのものを広げていく。そういうことに挑戦していきたいですし、世界各国から人が集う環境を実現していきたいと考えています。