MENU

SDM特別講義 2024年度 春学期

第1回

2024年4月12日
(4月6日入学ガイダンスにて収録)

モデレータ教員:
当麻

Alberto Millán Martín氏

慶應義塾大学経済学部 准教授

アルベルト・ミヤンマルティン 氏

【演題】新しい時代の翻訳者:福澤諭吉

講師プロフィール

スペイン・マヨルカ島生まれ。バルセロナ自治大学で翻訳通訳学を修め、大阪大学で博士号(日本語・日本文化)を取得。同志社大学助教などを経て、2016年より慶應義塾で教鞭を執っている。スペイン語文法、比較文化論、翻訳学の研究セミナーを担当する傍ら、福澤研究センター所員として福澤諭吉の初期思想研究やその普及に励んでいる。共編著訳『「中津留別之書」―多言語で読む福澤諭吉』、単著『『修身論』の「天」:阿部泰蔵の翻訳に隠された真相』、三田演説会講演録「近代日本の翻訳文化と福澤諭吉─『学問のすゝめ』150年を記念して」(『三田評論』)など。スペイン語では、日西の近代教育制度の比較や日本の翻訳史に関する論文もある。

講義概要

近年では機械翻訳が流行し、AI通訳機と呼ばれるものをはじめ、言語の壁をなくした「文明の利器」が巷に溢れています。しかし、そのような技術が現れるまでは、歴史の中でどのように「翻訳」が行われてきたのでしょうか。一例に日本の歴史を見れば、本来の「翻訳」とは人間の文化的行為であり、各個人が特定の時代背景や社会的状況の中で文脈に応じながら、多種多様に行ってきた知的活動であることがわかります。本講義では、江戸時代の宣教師や蘭学者から幕末明治の啓蒙思想家までの歴史を踏まえた上で、文化の翻訳者としての福澤諭吉の活動を取り扱います。具体的に、修身論で知られる米国人フランシス・ウェーランドからの影響と『学問のすゝめ』への発展を紹介しながら、「中津留別之書」(1871)に見る福澤の伝統的な言葉遣いと近代的な社会思想の関係を明らかにし、精神的な「文明開化」において彼の「翻訳」が果たしてきた役割について考察と評価を試みます。福澤先生による古い時代から新しい時代への円満な移行の試みは、巧みな言葉で紡いだ論理の展開に現れ、現代の私たちにとってもインスピレーションの源になるでしょう。

 

第2回

2024年4月19日

モデレータ教員:
当麻

尾身 茂 氏

公益財団法人結核予防会 理事長

尾身 茂 氏

【演題】新型コロナ これまで、これから

講師プロフィール

1978年自治医科大学卒業。1999年第5代WHO西太平洋地域事務局長。2009年よりWHO執行理事。2012年より独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構 理事長、内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議の長。2014年より独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)理事長。また社会貢献活動として組織の利害やイデオロギーにとらわれず、将来の社会づくりに貢献すべく2015年9月、NPO法人「全世代」を設立。2020年2月より新型コロナ感染症専門家会議 副座長、2021年4月より新型インフルエンザ等対策推進会議 基本的対処方針分科会 会長。2022年4月より公益財団法人結核予防会(JATA)代表理事、JCHO名誉理事長。2022年6月よりJATA理事長。

講義概要

新型コロナウイルス感染症について、我が国では様々な感染対策を講じてきた。クラスター対策や検査体制、緊急事態宣言等の措置を振り返りながら、これまでの評価をしていく。
また、その評価によって抽出された課題やこれからの見通しについて述べていきたい。

 

第3回

2024年4月26日

モデレータ教員:
当麻

日比谷 孟俊 氏

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属SDM研究所 名誉顧問

日比谷 孟俊 氏

【演題】リベラルアーツ:VUCA の時代を乗り切る力

講師プロフィール

1971年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。1978年 エレクトロニクス材料の研究開発にて工学博士、2016年 江戸吉原の研究にて博士(文学)、1971-2001年 NEC 基礎研究所 主席研究員、2002年-2006年 東京都立科学技術大学工学部航空宇宙システム工学科教授(現,東京都立大学)、2007年 慶應義塾大学先導研究所教授、2008年-2011年大学院システムデザインマネジメント研究科教授、1992年 東北大学金属材料研究所客員教授、1997-2002年 東京工業大学客員教授、現在 実践女子大学文芸資料研究所客員研究員として文と理との境界領域研究に従事。

講義概要

VUCA (volatility, uncertainty, complexity, ambiguity)の時代に対応するには、俯瞰的に事象を眺め分析し、解決してゆく能力が求められており、SDMではactive learning の手法を取り入れた design project を実施している。その第一歩は事象の俯瞰的な理解である。Mind Mapなどは、そのツールとして有効である。
その際に重要なのが、自分の専門外に、どれだけの情報や知識を持ち合わせているかである。すなわち,リベラルアーツの力である。卑近な例は、3.11 の東日本大震災での東京電力と東北電力における、原子力発電所のダメージの違いに象徴される。女川原発建設に携わった当時の東北電力平井弥之助副社長は、土木技術者でありながら、貞観地震における東北地方の被害を『三代実録』などから知り、海面から14mの高さに発電所を作るべきとして譲らなかった。マスコミは福島原発のことしか報道しないが、地震の後300名以上の住民が、安全な場所として女川原発周辺に避難できた。
事象は文系も理系もなく一つである。この二つの領域をまたぐ力こそ、リベラルアーツに他ならない。

 

第4回

2024年5月10日

モデレータ教員:
新妻

近藤 克彦 氏

アドヴァンスドファーマ&テクノロジー株式会社 CTO 未踏医科学研究財団 理事長

近藤 克彦 氏

【演題】デジタル革命第二章 開幕

講師プロフィール

1979年よりプログラミングを行っている生粋の「オタク」
高千穂バロース、IBMを経て現在もシステム構築を生業として動いている。
情報処理推進機構(IPA)の未踏ソフトウェア創造事業で「スーパークリエータ」(天才プログラマー)として認定された。プロジェクトは「知識蓄積型推論データベースの開発、応用」というテーマで2000年に採択された。また、2001年には「大容量メディアを対象としたオブジェクト指向型の制御システム」というプロジェクトで再び未踏プロジェクトに採択された。

講義概要

デジタルの進化の中で、半導体に代表されるハードウェアの進化は著しいものがあり、日常生活において大きな変化をもたらしている。更に半導体の進化が続いている中でソフトウェアは過去のままのプログラミングとデータベースで構築されている。 コンピュータの進化と半導体の進化、またそれらを動かしいくソフトウェアのバランスがデジタルという観点からみるとアンバランスになると考えられ、更にデジタルの世界が進化することでエネルギーを膨大に消費されることも考慮に入れたうえで、新たなデジタル世界の構築のために計算を中心としたコンピュータの世界から、言葉を中心としたコンピュータ(デジタル)に変化させ今後発展するであろう「IOB」の世界をを実現するための技術とコンセプトをご紹介する。

 

第5回

2024年5月17日

モデレータ教員:
西村

吉田 篤生 氏

吉田篤生会計事務所 所長・税理士

吉田 篤生 氏

【演題】 経営と生命のシステムに学ぶデザインとマネジメント

講師プロフィール

1970年 3月 慶應義塾大学商学部卒
1974年 12月 税理士登録
1975年 7月 吉田篤生会計事務所 設立 所長(現任)
2004年 6月 東映アニメーション株式会社 取締役
2011年 4月 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特別招聘教授
2018年 6月 エン・ジャパン株式会社 監査役

講義概要

現在の世界の情勢を見るにつけ、時代は正に大きな転換期に差し掛かっている。この大きな時代転換の本質を的確に捉えることが必要である。
私は、現在の状況に最も近い過去は、500年前に起きた大航海時代と似ていると考えている。人類は、日々新しい知識と経験を積んでいるが、人類が築いてきた科学技術も、まだ一通過点に過ぎない。ましてや経済学の世界は、僅か300年足らずの歴史でしかない。経済が豊かになる事と、人間が幸せに生きる事とは全く異質の問題である。科学、経済、その他のすべての学問は、その本質を捉え直す必要がある。
これからの500年に向けて人類が考えなくてはならないことと、日本という国が果たす役割を考えてみたい。

 

第6回

2024年5月24日

モデレータ教員:
前野

高田 幸徳 氏

住友生命保険相互会社 取締役 代表執行役社長

高田 幸徳 氏

【演題】 住友生命が取り組む「ウェルビーイング(=よりよく生きる)」とは

講師プロフィール

大阪府出身。京都大学経済学部卒。1988年入社、営業企画部長、企画部長、執行役常務などを経て2021年4月より現職。同社が力を入れる健康増進型保険"住友生命「Vitality」"の販売推進を担当した。59歳。

講義概要

ウェルビーイングの趣旨を簡潔に表すと、「一人ひとりのよりよく生きる」。幸福や健康の捉え方が多様化するなか、その考え方は注目を集め、ビジネスの手法までも変えようとしている。企業がウェルビーイングへの貢献を戦略に掲げることで、どのような価値を社会に提供するのか。本講義は、第1回「ウェルビーイングアワード」でモノ・サービス部門グランプリを受賞した住友生命保険相互会社 高田幸徳・取締役代表執行役社長と同アワードで審査委員長を務めた前野隆司・慶應義塾大学大学院教授(ウェルビーイング学会代表理事)の対談、SDM聴講生との議論などのプログラムを軸に、住友生命が健康増進型保険"住友生命「Vitality」"を核として経営の真ん中に「ウェルビーイング」を据える意味と、「ウェルビーイング(=よりよく生きる)」に関する理解促進を企図する。
※本講義は、カメラ・動画の撮影が入ります。撮影した画像や映像は、朝日新聞デジタルやYouTubeチャンネル、住友生命ホームページ・SNSなどで公開される可能性があります。
◆写真・動画への掲載を希望されない場合は、講義室入室前に受付にてお申し出ください。

 

第7回

2024年5月31日

モデレータ教員:
猪熊

斎藤 静樹 氏

東京大学名誉教授

斎藤 静樹 氏

【演題】 会計測定のシステムと開示制度のデザイン

講師プロフィール

東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士(東京大学)。東京大学経済学部助教授、教授を経て2003年に停年退官。明治学院大学経済学部教授、2012年に停年退職。その間、公益財団法人財務会計基準機構・企業会計基準委員会委員長(2001~2007年、初代)、日本会計研究学会会長(2006~2009年)のほか、金融審議会、企業会計審議会、法制審議会会社法部会の各委員。

講義概要

 企業会計は、企業の投資とその成果を計数化して関係者に開示するシステムである。経営者による企業内部のマネジメント・コントロールと、投資家など外部者へのファイナンシアル・ディスクロージャーという両面の役割を担うが、ここではもっぱら後者に着目する。会計情報の開示により投資家の保守的なリスク評価が緩和され、投資家はその情報を利用して企業の株式や社債を評価する。この仕組みが、資本市場における公正な証券価格の形成に寄与するとみられるのである。
 そうした会計情報の作成や開示を仕切るのが会計基準だが、それは単に投資家への情報開示だけではなく、法人税法による所得課税や会社法による分配規制をはじめ、多くの法や公的規制ないし私的契約との間でも、相互補完的な関係が国ごとに設けられている。したがって、現実の会計基準は投資情報としての有用性だけで決められるわけではない。会計基準のグローバル化を進めるにあたっても、これら周辺諸制度の動向を同時に考慮する必要がある。

 

第8回

2024年6月7日

モデレータ教員:
西村

曽根 佳弘  氏

株式会社三義漆器店 代表取締役

曽根 佳弘 氏

【演題】地球再生の合図を会津から。~会津塗りの伝統と、脱プラスチックの融合~

講師プロフィール

福島県会津若松市出身 60歳 東京電子専門学校中退 家業を継ぐために帰郷
1985年入社 2007年社長就任
2021年中小機構中小企業応援士 2022年会津若松商工会議所常議員議員 2023年福島県中小企業家同友会代表理事
2024年東北大学大学院経済学研究科地域イノベーションクリエータ塾卒(優秀賞受賞)

講義概要

伝統を止めない。新しい伝統をはじめる。これは三義漆器店のスローガンです。創業九十年の三義漆器店は、漆器の可能性を信じて人に寄り添い、時代のニーズに寄り添った器をつくってきました。利便性を理由に木製よりも樹脂製の器が求められれば、樹脂の漆器をつくり、震災や海外で撥水塗装の食器が求められれば、その声に応えてきました。プラスチックごみ問題が深刻な状況となった今、欧米では使い捨てプラスチック製品の製造を禁止、制限、課税などのアクションが始まりました。私たちが始めた行動のひとつが「PLA(生分解性バイオプラスチック)」によるブランドづくり。植物由来のプラスチック商品を広めて、環境問題の解決に貢献したい。そしてSDGs12「つくる責任。つかう責任。」のゴールに向け、会津から地球再生の合図を出していきます。最近では、国際特許のライセンスと共に環境省実証事業で、射出成形による世界最薄(0.53mm)のグラスを製品化し世界に向け発表をしました。

 

第9回

2024年6月14日

モデレータ教員:
西村

石川 貴之 氏

日建設計 執行役員 IDセンター代表(兼 日建設計総合研究所 代表取締役所長)

石川 貴之 氏

【仮題】イノベーション経営に向けて~建築・都市を取り巻く社会課題解決のための日建設計の共創的取組みを通じて~

講師プロフィール

1987年九州大学大学院を経て日建設計に入社。専門は都市計画。以来、施設企画から大規模開発まで幅広く建築と都市に関する業務を担当。2008年に日建設計総合研究所に転籍、2009年から2年間、日本プロジェクト産業協議会に出向し、政策提言活動に携わった後、国内では郊外再生まちづくり、海外ではインフラシステムの国際展開業務でスマートシティやTOD(公共交通主導型都市開発)の案件組成を支援。2021年からは日建設計に再転籍し、日建グループのオープンイノベーション推進を担当。2024年1月より、日建設計総合研究所所長を兼任。技術士、認定都市プランナー。日本都市計画家協会正会員。

講義概要

明治に入り貨幣経済が本格化し、住友は銀行業を営むことと本店建設を計画。そのため、1900年に建築専門家集団である「住友本店臨時建築部」を発足。これが日建設計の原点で、時代の要請とその先端を拓く施主の想いを「用(必要性・課題)」として「プロジェクト」を実現するために組織化されました。この住友本店プロジェクトでは、新時代の銀行のあり方を建築として示し、関西の経済発展、近代銀行業の確立に「貢献」しました。
このように当社は「用→プロジェクト→貢献」を通じてノウハウを蓄え、次なる「用」に応えることで社会と共に組織を成長させてきました。
しかしながら、近年、建築・都市における「用」というべき社会課題は複雑になり、当社のノウハウだけでは、プロジェクトの実行や社会への貢献も十分に果たし得ない状況になりつつあります。
そのため当社は「オープンプラットフォームへの進化」を経営ビジョンに掲げ、社外のノウハウを積極的に結集し、旧来のスタイルに加え、領域を超えて課題解決を取り組み、社会貢献するイノベーション経営に取組み始めています。
当社の事例を通じ、企業がイノベーション経営に取り組む背景や理由を考える契機としたい。

 

第10回

2024年6月21日

モデレータ教員:
前野

渡邊 智惠子 氏

一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー 代表理事

渡邊 智惠子 氏

【演題】衣類を「ごみ」から「資源」に ~繊維の廃棄物から「紙」を作り活用する~

講師プロフィール

株式会社アバンティ代表取締役創設者。現在相談役。
1985年株式会社アバンティを設立。 1990年より日本でのオーガニックコットンの啓蒙普及に取り組み、日本でのオーガニックコットンの製品製造のパイオニア。 企業活動以外に、オーガニックコットンの啓蒙普及と認証機関としてのNPO日本オーガニックコットン協会を設立。 グローバルスタンダード(GOTS)の基準作りにも関わる。 2016年、一般財団法人森から海へ、代表理事就任。鹿による森林破壊を防ぐべく、命を繋ぐペットフード事業に取り組んでいる。
2017年、一般財団法人22世紀に残すもの発起人として活動を始める。 2021年3月には繊維のゴミを資源にするプロジェクトを立ち上げ、繊維から紙へ、繊維から繊維へという一般社団法人サーキュラーコットンファクトリーの代表理事としての活動をメインとして行なっている。

1952年 - 北海道斜里郡生まれ。
1975年 - 明治大学商学部 卒業後、(株)タスコジャパンに入社し8年後に副社長となる。
1985年 - 子会社の株式会社アバンティ設立 代表取締役 就任
1990年 - タスコジャパンを退職。
1993年 - (株)コットンハウスジャパンをテキサス州サンアントニオに設立 代表取締役 就任
1993年 - 特定非営利活動法人日本テキサスオーガニックコットン協会の設立に携わり、7年後に副理事長となる。
2009年 - 経済産業省「日本を代表するソーシャルビジネス55選」に選ばれる。
2010年 - NHKプロフェッショナル「仕事の流儀」に取り上げられる。
2011年 - 一般社団法人小諸エコビレッジ設立 代表理事 就任
2011年 - 東北復興支援「東北グランマの仕事づくり」を開始。
2012年 - ふくしまオーガニックコットンプロジェクトを開始。
2013年 - わくわくのびのびえこども塾を一般社団法人化 塾長に就任
2016年 ‐ 一般財団法人森から海へ 設立
2021年 ‐ 一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー 設立
 - 株式会社アバンティー代表取締役退任、相談役へ
2023年- 大阪経済大学 客員教授

講義概要

『「着る」を『資源』に』をキーワードに、廃棄される繊維を紙にして CO2 削減を⽬指す活動をしています。世界の環境問題の一つが繊維ゴミ問題です。日本の衣類のリサイクル率は低く、約65%は焼却処分か埋め立て処分されていますが、紙のリサイクル率は高いです。一方フランスでは2022年1月売れ残りの新しい衣料品の廃棄を禁止する法律が施行され、違反した場合は罰金が科せられます。そこで、私達は技術開発に取り組み、様々な繊維廃棄物から紙を作ることにしました。 環境への負担を減らして、使わなくなった繊維を和紙と洋紙、内装ボードなどに⽤途開拓を して、名刺から部屋の壁に使われるまで広がってきています。
循環型社会構築のため、繊維からつくった紙の販売をはじめ、地域の伝統祭りに関わり、アーティストとのコラボレーション等も行っています。

 

第11回

2024年6月28日

モデレータ教員:
新妻

稲葉 俊郎 氏

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM) 特任教授

稲葉 俊郎 氏

【演題】いのちを呼びさます場を創る

講師プロフィール

1979年熊本生まれ。医師、医学博士、作家。2004年東京大学医学部医学科卒業、東京大学医学部付属病院循環器内科助教(2014年~2020年)を経て、2020年4月に、軽井沢病院総合診療科医長、信州大学社会基盤研究所特任准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、東北芸術工科大学客員教授(山形ビエンナーレ2020, 2022, 2024芸術監督)を兼任。その後、2022年4月から2024年3月まで同病院院長も務める。2024年5月より、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM) 特任教授。在宅医療、山岳医療にも従事。西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。医療と芸術、福祉など、他分野と橋を架ける活動に従事している。

講義概要

私は医療現場で20年間働いてきましたが、「病気学」としての病気を扱う病院だけではなく、健康や幸福を扱う「健康学」としての「いのちを呼びさます場」をつくることが必要だと痛感しています。新しい医療の場は、あらゆる立場の人が「いのちのフィロソフィー」を持った上で共創していく必要があります。そのためには、「いのち」の歴史を知り、「いのち」や「からだ・こころ」の本質を深く理解する必要があります。私たちは外界にある意識界に適応し過ぎており、内界にある「いのち」や「からだ」という無意識界から離れすぎています。異世界である意識と無意識は適切につながり調和する必要があり、私は特に医療と芸術が融合する世界をイメージしています。山形ビエンナーレ(2020, 2022, 2024)という芸術祭では芸術監督を務め、芸術と医療が出会う場を実践しました。また、「個」と「場(システム)」の特徴を理解し、「いのち」の力が高まる場を考えながら、感覚を更新していく必要があります。芸術の役割を含めて、私なりの新しい場づくりの実践を共有しながら、新しい「いのちを呼びさます」場を共に創る一助になれば幸いです。

 

第12回

2024年7月5日

モデレータ教員:
矢向

鈴木 祐二 氏

NPO法人すぎなみ子どもサポート理事長

鈴木 祐二 氏

【仮題】今求められる「非認知能力」

講師プロフィール

1974年3月慶應義塾大学経済学部卒業
1974年4月旧三菱信託銀行入社
2012年6月副社長退任後は篠笛を吹き山を歩き酒を愛すると共に、社会貢献活動に邁進している。

講義概要

学校成績優秀と社会が求める能力に大きなギャップがある。非認知能力の価値が高まっている。それは多様な人々との交流を含む「体験」から生まれる。ビジネス経験とボランティア実践の例から。

 

第13回

2024年7月12日

モデレータ教員:
当麻

田辺 昌子 氏

もと千葉市美術館副館長、国際浮世絵学会常任理事

田辺 昌子 氏

【演題】美術館というビジネス

講師プロフィール

東京都生まれ。学習院大学人文科学研究科博士前期課程修了。永青文庫学芸員を経て千葉市美術館の開設に準備室段階から関わり、主に浮世絵関係の研究、展覧会企画・実施を担当、もと千葉市美術館副館長。 2008年 『鳥居清長』展図録で第 一回国華賞展覧会図録賞受賞(共同受賞)、2018年 論文「菱川師宣と浮世絵の誕生 房州から江戸へ」(國華1465号)で第30回國華賞受賞。主な著書に『浮世絵のことば案内』(小学館 2005年)、 『鈴木春信 江戸の面影を愛おしむ』(東京美術 2017年)、『もっと知りたい 浮世絵』(東京美術 2019年) 等があ『もっと知りたい 喜多川歌麿』(東京美術 2024年) 等がある。

講義概要

美術館は収入を得るための経営システムの中に組み込める施設なのか。東京オリンピックをきっかけとしたインバウンドへの期待から、政府は美術館を観光業と同一視しようとしたようにも思える。しかし思いがけないコロナ禍、円安、電気代や輸送費の高騰、働き方改革、予算と人員の不足等々の要因により、現在美術館業界の事業規模は実質的に縮小傾向にある。日本独特のシステムとも言える委託先(マスコミ等)に、展覧会事業を予算的、そして内容的にもほぼ「丸投げ」できる施設はまだ幸運なのだろう。少なくとも数字上、日本が先進国中でも脆弱な文化体制にあることは明らかである。「文化」という言葉のオブラートに包んで、実態なく提唱されてきたスローガンに我々は惑わされるところはなかったか。長く公立美術館の学芸員として働いてきた実体験から、美術館を裏側から検証し、真に求められる美術館になるために必要な企画力や経営感覚について受講者と共に考えたい。

 

第14回

2024年7月18日

モデレータ教員:
猪熊

青木 玲子 氏

公正取引委員会・委員 一橋大学・名誉教授 

青木 玲子 氏

【演題】デジタル化・SDG時代の競争政策

講師プロフィール

スタンフォード大学で統計学MSと経済学PhDを取得。専門は産業組織論、応用ミクロ経済学、イノベーション、特許、世代間問題が主な研究テーマ。アメリカとニュージーランド大学ので研究・教育に従事、2006年から一橋大学経済研究所教授、2014年から九州大学理事(国際、男女参画、知財担当)・副学長、2016年から現職及びOECD競争委員会副議長。2009‐2014年総合科学技術イノベーション会議非常勤委員。学術会議第23期会員、元日本法と経済学会会長、2024年5月から日本経済学会会長。

講義概要

デジタル化と持続的社会の構築は世界的な課題であり、日本も対応が迫られています。デジタルと気候変動は社会と経済を変化させている一方、対応するためにも変化が必要です。競争政策もその変化を促す効果が期待されます。講義では、1)競争政策とイノベーションの経済学 2)日本の独占禁止法の概要 3)デジタル化関連の独禁法事件とスマホ新法(スマホ特定ソフトウエア競争促進法) 4)SDG関連の競争政策の課題とグリーンガイドライン(「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」)を紹介します。

 

第15回

2024年7月26日

モデレータ教員:
小木

北谷 賢司 氏

金沢工大虎ノ門大学院教授、DAZNJapan会長、インターFM取締役、ブロードメディア取締役

北谷 賢司 氏

【演題】音楽エンタテイメント産業の歴史、構造とサブスク、ライブ興行へのシフト

講師プロフィール

ワシントン州立大学コミュニケーション学部放送報道学科を卒業後、ウイスコンシン大学大学院にて通信法、メディア・エンタメ産業経営を専攻し、1981年にこの領域で日本人初の博士号を取得。 ワシントン州立大学助教授、インディアナ大学テレコミュニケーション学部経営研究所副所長といった学務と並行し、日本テレビ、TBSで国際事業顧問を務め、TBSメディア総研取締役、TBS米国法人上席副社長、東京ドーム取締役兼米国法人社長、ソニー本社執行役員兼米国本社エグゼクティブ・バイス・プレジデントを経て、2004年に帰国。ソニー特別顧問、ぴあ社外取締役、ローソン顧問、エイベックス国際ホールディングス社長、世界最大のエンタテイメント施設/スポーツ・ライブエンタメ複合企業のAEGのアジア担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼日本代表を歴任。 その間、1980年代に、日本テレビで「鉄腕アトム」や「バチカン・システナ聖堂壁画修復ドキュメンタリー」の英語版脚本の監修・制作、テレビ朝日でレーガン政権誕生報道番組キャスター、TBSで「世界バレーボール選手権」や「世界フィギュアスケート選手権」などの放映権獲得交渉を担当。 1990年代には、東京ドーム招聘興行担当役員としてNFL、NBA、ローリング・ストーンズの興行を日本初開催。ほか、U2、マドンナ、マイケル・ジャクソンなど多数アーティストを招聘し、博士号を持つ伝説のプロモーター「ドクターK」として世界的に著名に。 そして2018年から2019年、AEGのアジア担当EVP兼日本代表として、セリーヌ・ディオン、エド・シーランの来日ドーム公演も手掛け、同社の名古屋、大阪のアリーナ運用権の取得にも寄与した。 2021年12月AEG退任後は、三菱商事都市開発、NTTドコモ、乃村工藝社、FM東京、イスラエルInnoCan製薬の顧問、インターFM取締役、ブロードメディア監査役などを兼務。2005年から2021年まで 米ワシントン州立大学レスター・スミス栄誉教授、2010年から金沢工業大学虎ノ門大学院教授、同コンテンツ&テクノロジー融合研究所長といった、日米大学での教務も継続している。 2023年10月にDAZN Japan チェアマン(会長)に就任。 主な著書に『エンターテインメント・ビジネスの未来2020-2029』『同ポストパンデミック編』『エンタメの未来2031』(日経BP)、『ライブ・エンタテインメント新世紀』(ぴあ総合研究所)、『人を動かす力、お金を動かす力』(サンマーク出版)など。

講義概要

音楽産業はCD販売が凋落し、2000年前後には存亡が危惧されたが、現在では配信、興行、ファンクラブ、マーチャンダイジングなどにビジネスモデルを拡大することにより更なる成長を遂げている。本講義では、日本市場の視座から、難解なアーティスト・マネージメント事業の構造も含め、音楽産業を解明、今後のトレンドを分析する。