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SDM NEWS2014年度まで、SDMの近況をお伝えするために、PDF形式の"SDMニュース"を配信していました。過去のSDMニュースは以下よりご覧いただけます。
なお、2015年度より、ホームページのニュース欄に最新のニュースを掲載する形に刷新致しました。最新情報はニュースの欄やイベントカレンダーをご覧ください。また、イベント等のメール配信は引き続き行なっていますので、ご希望の方はお問い合わせフォームよりお申し込みください。

2014年

高度技術社会のためのシステムズエンジニアリング
(SDM研究科教授 春山 真一郎)
慶應日吉キャンパスの美しく黄色に染まった銀杏並木の葉が散り始め、年の瀬が押し迫り、寒さの身にしみる季節となりました。
2014年に慶應SDMが新しく取り組んだプロジェクトの一つが、MIT Press(マサチューセッツ工科大学出版局)から出版されたEngineering Systemsシリーズの本を慶應SDMの教員を中心に翻訳して慶應義塾大学出版会から出版したことでした。まず、2014年2月に、そのシリーズの本「エンジニアリングシステムズ:複雑な技術社会において人間のニーズを満たす」(オリヴィエ・L・デ・ヴェック、ダニエル・ルース、クリストファー・L・マギー 著、春山真一郎 監訳、神武直彦、白坂成功、冨田順子 訳)が出版され、2014年10月には、「デザイン・ストラクチャー・マトリクス DSM 複雑なシステムの可視化とマネジメント」(スティーブン・D・エッピンジャー、タイソン・R・ブラウニング 著、西村秀和 監訳、大富浩一、関研一 訳)が出版されました。このシリーズに統一して流れるコンセプトは、近年ますます複雑化してきている通信、交通、電力などの技術システムや社会システムにおいて、全体を見渡して調査、分析、検討、提案、設計をすることが大変重要であるという考えです。多くのシステムが互いに相互作用するようなSystem of Systemsの場合、個々のシステムの境界が明確でないことが多いため設計自体が難しく、またシステム全体を構築したり最適化したりすることも極めて困難です。また、そのような高度技術社会では、個々の技術や社会にかんする高度な専門知識が重要になりますが、そのような木(専門知識)に注目すればするほど森(システム全体)を見渡すことが困難になる傾向があり、現在の日本や世界はまさしくそのような状況にあるのではないかと思われます。
そのような現状を打ち破るため、慶應SDMでは、このような出版、授業、研究等の活動を通じて森を見渡すことが出来る人材を育てています。特に、システム全体を見渡したアーキテクチャ設計・検証、イノベーティブなアイデアを創り出すデザイン思考、さらにそれらを実行するためのマネジメントに重点を置いて教育研究を続けています。
TOPICS
1. 慶應SDM公開講座「幸せを育むポジティブワークショップ」
2. 恒例のオープンKiDS(2014年度第3回)を開催
3. 「未来型経営論~人間中心のマネジメント、リーダーシップ」を開催
4. 西島株式会社を訪問
欧米の"ビジョン"を眺めて思うこと
(SDM研究科教授 西村 秀和)
2014年10月29日(水)に日本OMGの主催で開催されました「インダストリアル・インターネット シンポジウム」では,米国のIndustrial Internet Consortium(以下、IIC)、ドイツのIndustry 4.0関連の情報交換が活発に行われました。
IICやIndustry 4.0では、2030年頃までに製造業やサプライチェーン、ヘルスケア、エネルギー、輸送などの産業がInternet of Things(IoT)の活用をさらに加速し、大きな変革を遂げて行くという方向性が示されています。これらの関連資料を読んでみて気がつくのは、その基盤にシステムズエンジニアリングがあること、そして、対象とするシステムが極めて複雑で大規模になっているため、モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)が必要になることです。
7月に開催されましたINCOSE International Symposium 2014では、2025年に向けてのビジョン、INCOSE SE Vision 2025が発表されました。この資料はINCOSE会員ではない方にも入手できます注)ので、是非お読みいただきたいのですが、自然環境やコミュニティや経済などが対象とするシステムと相互に関係する、いわゆるSystem of Systemsで価値を最大化するために、技術アプローチによって新しいシステムを開発していくということが明確に語られています。これを実現するためにシステムズエンジニアが担うべき役割は非常に大きなものになります。政策決定者に対して新しいシステムを導入することの必要性を正しく提言する役割を持ちます。
先に述べたシンポジウムでの講演によれば、オランダのある大手半導体製造装置メーカーでは、Industry 4.0の目指す方向性に向けて、すでに準備を開始しているとのことでした。いわゆるProduct Lifecycle Managementがシステム開発の上流と統合されることが極めて重要となり、そこでは、プロダクトの実体に整合する"モデル"の存在が重要となります。まずは、こうした欧米のビジョンに置いて行かれないように尽力したいと思います。
SE Vision PDF booklet
TOPICS
1. 第2回OpenKiDS「イノベーション創出のためのワークショップをデザインする」
2. ソーシャルデザインと地域イノベーション
3. 慶應SDM公開講座『2020年に向けて考える日本のソーシャルデザイン』
4. 新エネルギー活用&持続可能社会研究プログラム第7回ワークショップ報告
5. G空間未来デザインプロジェクト・アイデアソン開催
6. プロジェクト・デザイン合宿研修前半開講
7. NEアカデミー:モデルベース・システムズエンジニアリング入門
コラム:超高精細映像の簡単光伝送実現を目指して
書籍紹介:『低炭素社会におけるエネルギーマネジメント』
ラボ紹介:スポーツデザイン・マネジメントラボ
専任教員からのメッセージ「社会の通説は正しいか?」
(SDM研究科教授 中野 冠)
経営学を中心に、通説を覆す定性的理論研究が注目されています。スワンが白いという通説はオーストラリアでブラックスワンを発見することによって覆った歴史をもとに、「ブラックスワンの経営学」という書籍も出ています。
経済や社会システムでも通説はいつも正しいとは言えないようです。円安になればものづくり企業の輸出が増えて日本経済は良くなるという通説は、現在怪しくなりつつあります。高税率、高為替、高給与、高金利、短時間労働に対する否定的な見解と現地生産、成果主義などに対する肯定的な見解はもっと見直されるべきかもしれません。高税率のデンマークやフィンランドは社会保障によって、通貨の高いスイスはそれに伴う給与の高さによって、知識と技術を有する人材を確保して発展しているように見えます。World Economic Outlook Databaseによれば、2013年のこれらの国の一人当たりGDPは日本より上位にあります(スイス4位、デンマーク6位、フィンランド14位、日本24位)。もちろん一人当たりGDPが高いから幸せかどうかは議論の余地がありますが、日本が海外から若手の優秀なグローバル人材を獲得しようとしても、過酷な労働環境と低賃金によって難しい場合が多いでしょう。
ところで、SDM研究科では、デザインゲームとビジネスゲーム(シリアスゲーム)を融合したマネジメント教育プログラムを開発しています。本年はマサチューセッツ工科大学、スイス連邦工科大学とともに慶應義塾学生向けに授業やセミナーを実施しています。英語で行っているため留学生も多く参加しており、国際的な教育の場になっています。今後は社会人向け教育プログラムとしても拡張していく予定です。その中では、上記のような通説を覆すことを学ぶ発想法とグループで楽しく学べるシリアスゲームを取り入れていきたいと考えています。
TOPICS
1. 盛況だった第2回農業・農村・地域活性化セミナー
2. "納期短縮の8つのワザ"を極める「タイム・マネジメント特別講座」開講
3. 有人火星ミッションデザイン国際学生コンテストにおいてSDM研究科学生を中心とした日米合同チームが優勝
4. SDM専任教員合宿を開催
5. 「プロジェクト・デザイン合宿研修」の説明会を開催
6. 農都共生ラボ(アグリゼミ)長野県小布施町視察
7. 「こと」ものづくりシンポジウム「日本企業のイノベーション創出の課題と対策」
8. 講演会「ビジネスマネジメントの新潮流」の開催
9. 日本創造学会授賞式
10. SDM研究科協力のロボット宇宙飛行士「キロボ」会話実験プロジェクトがグッドデザイン賞を受賞
コラム:安心安全を実現する第三者機関の必要性
書籍紹介:『位置情報ビッグデータ』
ラボ紹介:VSEセンター
専任教員からのメッセージ「プロジェクトにおけるデザイン能力」
(SDM研究科准教授 当麻 哲哉)
残暑お見舞い申し上げます。あっという間に秋の気配を感じる陽気になってきました。いつも私どもの教育、研究活動を支えてくださっている皆様方に、心より感謝申し上げます。
私は慶應SDMでプロジェクトマネジメントを教えていますが、必修科目として教えている大学は日本ではまだ少数です。しかし様々なことが複雑に絡み合い、変化が激しく多様化した現代社会において、福澤諭吉が生きていたらきっと教えていたに違いないプロジェクトマネジメントは、社会が求めるニーズに合った実学中の実学であると思います。
世の中ではどんどん新しい技術が生まれ、人々の思いも変化してマーケットの予測が難しくなっています。プロジェクトを取り巻く様々な環境の全体を見渡して、あるべき姿を具体的に描いていくことは、大きなキャンバスのデッサンに色を加えディテールを表現していくデザインのプロセスだといえます。これにより複雑なプロジェクトが具体的に取り組める形になり、ゴールの目標とタスクの手順が見えてくるのです。計画段階に限らず実行段階でもデザイン感覚が求められます。刻々と変化する状況の中で、得られる情報を整理し及ぼす影響のバランスを取りながら、全体像を見失わずに意思決定していくプロセスがデザインであり、慶應SDMの「システム×デザイン思考」が生かされる場なのです。
大学院附属の「SDM研究所」では、一般向けのセミナーも開催していますが、私がコーディネートし11月から12月にかけて開催する「プロジェクト・デザイン合宿研修」では、こうしたSDM独自の能力開発手法を実践的に生かすための他にはないオリジナルな教育スタイルを取っています。この研修を通して、これからの社会を変えていく次世代のプロジェクト・マネジャーを輩出していきたいと思います。
TOPICS
1. ワークショップ「学生の設計によるSDMワークショップ体験(「見た・聞いた」だけじゃ分からない、SDMワークショップを体験してみよう!)」
2. 鈴木明子氏公開講座「晩成力のシステムデザイン・マネジメント〜回り道がチカラになる〜」
3. 田中ウルヴェ京氏公開講座「トップアスリートに学ぶストレスをやる気に変える技術〜ポジティブサイクルを生み出すコーピングスキル〜」
4. INCOSE国際シンポジウム参加報告
5. 内山田竹志氏の公開講座とSDM研究科説明会を実施
6. MBA EXPO TOKYO 2014 Summer Reviewに出展
7. 慶應システムズスクール『システム思考入門:あらゆるモノ・コトをモデルで表現してみよう!』
8. iDECON2014でBest paper Award受賞
コラム:テレイマージョン技術の新たな展開
書籍紹介:『明日を拓く現代史(SDM講義録)』
ラボ紹介:ユニバーサルデザインラボ
専任教員からのメッセージ「SDMは新たな自分を再発見する舞台である」
(SDM研究科教授 手嶋 龍一)
慶應義塾大学大学院SDM研究科でインテリジェンス・システム論を担当している手嶋龍一です。私はNHKで特派員をながく務めていた経験から、「ミッドターム・キャリア」の重要性を痛感してきました。
日本のジャーナリストは、現場で厳しい競争にさらされながら働いているうち、やせ細ってしまいがちです。知的補給を怠っているからです。まさしく「メディアの焼畑農業」です。ワシントン支局長を務めていた時には、アメリカ人スタッフの多くが働きながら大学院に通って研鑽を積んでいました。
組織は活きのいい中堅を使い詰めにし、くたびれてくると現場から引き揚げて元気な若者に入れ替えます。会社はそれでいいのでしょうが、中堅の側はたまったものではありません。人生は一度きりのかけがえのないものです。時には立ちどまって、知的な養分を蓄え、新たな方角に歩みだすことも必要です。海外ではごく普通のことなのですが、いまのニッポンでは、人生の途上で知的な小休止をとることはいまだに稀です。
慶應義塾のSDM研究科は、人生のチャレンジを支える新しい大学院です。日本社会のシステムを変革してみたい。地域社会のありようを変えてみたい。自分の可能性に賭けて起業してみたい。そんな志を仲間と共にする学生に溢れています。そしてSDMで研究をやり遂げ、実自社会に再び戻って実践している仲間がいます。
私のゼミでは、現役の学生に劣らず、卒業生が毎月の研究会に顔を見せ、自分の問題意識を後輩たちと分かちあっています。研究会は入学希望者にも自由に開かれています。機会を見つけて参加してみてください。
TOPICS
1. PLM14でのBest Paper Award受賞
2. 2014年7月12日(土)-13(日)、 PMI日本フォーラムに慶應SDMが協賛
3. 慶應SDM・小布施ソーシャルデザインセンター を開設
コラム:一般社団法人可視光通信協会が2014年5月より活動を開始
書籍紹介:『システムズモデリング言語SysML』
ラボ紹介:地域資源利活用ラボ
専任教員からのメッセージ「希望に満ちた将来を創造する力」
(SDM研究科教授 高野 研一)
最近の世の中の動きを見ていると、社会、政治、経済のそれぞれの分野で大きく潮目が変わったと感じることが多い。特に、東日本大震災の前後で、大きな地殻変動が起こっているように感じる。社会分野では少子高齢化すなわち、人口減少社会に対する取り組みへのコンセンサスが徐々に得られ、具体的な対応が着手されつつある。
国際的な政治分野では戦後の冷戦体制が崩れ、米国の圧倒的パワーが失われると同時に日本を取り巻く状況も一変した。また、国内においてもリベラル政党の退潮につれ、保守回帰が鮮明になった。経済分野では、デフレ脱却傾向の中でかつての巨大企業が急速に力を失う一方、規模は小さいが独自のビジネスモデルや優れたクオリティを持つ企業が台頭してきている。こうした状況の中で、2020年のオリンピック誘致も明るい希望ではあるが、日本の未来を確かなものにしていくキーワードは社会・政治・経済など多様な分野の「イノベーション」であることは疑うべくもない。昨今、官民を挙げてイノベーションが花盛りではあるが、起業家魂の発揮や未知のビジネスのリスクを取る姿勢など、本当にこの国に根付くのだろうかという一抹の不安がある。最近、若手の起業家やベンチャーキャピタルの担い手と話をする機会があった。様々な話題が出たが、その中で若手起業家グループは大学のサークルの延長のような感覚で、渋谷道玄坂を中心とした半径500mの範囲に集結してくるという。ここでは事業失敗のセーフティネット、レピュテーション(評判)獲得が機能し、次から次へと学生のインターンシップ経験者が独立していくという。SDM研究科もこのようなソサエティーとして機能し始めている。21世紀後半のイノベーションはこうしたマインドを持った若手が担っていくことが実感できて妙にうれしくなった。
TOPICS
1. 国際会議CESUN2014報告
2. 2014年6月20日(金)、出井伸之氏の公開講座とSDM研究科説明会を実施
3. 健康ソーシャルビッグデータ・プロジェクト
4. 理工学部創立75年記念矢上キャンパス見学会でKPRIが研究成果展示
5. ロケーションビジネスジャパン(LBJ)2014
コラム:OMG Technical Meeting in Bostonレポート ~初めて参加して実感したこと~
書籍紹介:『経営工学のためのシステムズアプローチ』
ラボ紹介:ソーシャルデザインセンター
専任教員からのメッセージ「イノベーション創出活動の体系化からコンセプトエンジニアリングへ」
(SDM研究科准教授 白坂 成功)
2013年度は、これまでSDMで研究・教育してきたシステムx デザイン思考をもとに、イノベーション創出活動の体系化を行いました。特に、多様性を活かして、集合知を獲得するためのワークショップのデザインを体系化することを中心に活動しました。
文部科学省COIストリームのシーズ・ニーズ事業の一部として「イノベーション対話ツールの開発」を受託し、30の大学・研究機関と協力してイノベーション創出のためのワークショップとして、どのような手法をどのように組み合わせればこれまでにないアイデアにいたるかをデザインする方法論を、これまでのSDMの知見をブラッシュアップして構築しました。具体的には、これまでよりもより意識的に、これまでに考えたことの無いようなことを考える(これを「いつも考えている思考の枠を越える」と表現します)「イノベーティブ思考」をするための方法論として構築しました。しかし、ワークショップだけでイノベーション創出ができることは珍しく、むしろいろいろな他の活動と統合してはじめてイノベーション創出になることのほうが多いと考えられます。そのため、今年度も引き続き文部科学省から「イノベーション創出にむけた高度コーディネート人材育成事業」を受託し、イノベーション創出活動全体までその範囲を広げ、体系化することを目指します。最終的には、高度コーディネート人材を育成するための教材となる予定です。さらに今年度は、上記活動に追加して、よりシステムズエンジニアリングと統合し、コンセプトを作るため工学として、コンセプトエンジニアリングを立ち上げて行く予定です。今年も、どんどん新しい取り組みが生まれるエキサイティングなSDMになりそうです。
TOPICS
1. 慶應SDM 谷口智彦教授講演会兼SDM研究科説明会
2. 『システム×デザイン思考による協創入門(はじめての方のためのワークショップ)』を開催
3. システムズエンジニアリングセンター SysML & MBSEチュートリアル ~SysMLを活かしたアジャイルMBSE導入~
4. 6月8日(日)「2020年日本のスポーツキャリアの未来」フューチャーセッション
書籍紹介:『エンジニアリングシステムズ:複雑な技術社会において人間のニーズを満たす』
ラボ紹介:モビリティシステムマネジメントセンター
専任教員からのメッセージ「慶應SDMからTokyo 2020へ」
(SDM研究科准教授 神武 直彦)
2013年9月、ブエノスアイレスで開催された第123次IOC総会で2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定しました。夏季オリンピックとしては56年ぶり、オリンピックとしては長野オリンピック以来22年ぶりの日本でのオリンピック開催です。
SDM研究科の特徴のひとつは教員のみならず、学生の多くも産業界との連携が活発であること、また、実際に産業界に籍をおいて実務をこなしているということですが、このオリンピック・パラリンピックの誘致にあたってもSDM研究科の教員や学生が様々な形で参加し、ブエノスアイレスにて東京開催が決定した当日には、現地から笑顔に溢れた教員と学生の写真が関係者に配信され、その喜びを共有しました。被災地復興、少子高齢化、景気回復など様々な課題を抱える日本において、次世代を担う子供を含め国民が未来に希望を持つことができ、また、様々な形で日本が世界各国から注目される祭典が2020年に東京で開催されることは、少なからず日本が元気になるきっかけを生むことになると思います。SDM研究所では、およそ1年の準備期間を経て、スポーツにおける効果的な競技技術の向上・人材育成、非スポーツ分野との多様な連携によるスポーツの価値向上・普及拡大を目的としてスポーツデザイン・マネジメントラボを2013年に設立しました。また、今年、2014年は、SDM研究科が設立されてから6年、オリンピック・パラリンピックの東京開催まで6年です。オリンピック・パラリンピックの東京開催での成功、また、それを飛躍のタイミングと捉えた2020年以降の日本や世界の社会課題解決のためにSDM研究科が果たすべき役割は大きく、学生、研究員、教職員が一丸となって様々なことに取り組むことで少なからず価値のある社会貢献ができると考えています。そのためにも、システムズ・アプローチをベースに研究と教育を行うSDM研究科から国際的なリーダーを数多く輩出できるよう様々な挑戦を行って参ります。
TOPICS
1. 4月19日 研究科説明会を開催
2. 4月11日~13日 入学合宿を開催
3. 3月17日 ビッグデータ・イノベーションシンポジウムを開催
4. 4月19日 交流会を開催
書籍紹介:『システム×デザイン思考で世界を変えるー慶應SDM「イノベーションのつくり方」』
ラボ紹介:農都共生ラボ
専任教員あいさつ「SDM参加、挨拶の弁」
(SDM研究科教授 谷口 智彦)
今度数えてみたら、おぎゃーと(香川県高松市で)生まれてこの方、大小合わせて25回の転居ないし引っ越しをし、勤務先は7カ所、転職回数は6回に及びます。
オン年56、社会に出てからは33年でありますから、『日経ビジネス』に結構長く20年務めたことを度外視し単純平均をとると、約5年で職を変え、引っ越しに至っては、2.2年に1度してきた計算になります。
組織に頼るまいとして、せわしのない人生を歩んではきたものです。できれば好きなこと、やりがいを感じられることだけしていたいという我が侭をしいしい、それでもどこか、先々に予定調和を期待していました。新しいものへの挑戦を続けてきたら、犬も歩けばナントヤラ、素晴らしい港に入って、無事イカリを下ろすことができた。そしてここ、SDMにわたしはいます。
一回でも記者をやったら、ココロは生涯記者だ――。これをOnce a journalist, always a journalistといいます。わたしにも、どうやらこれは、当てはまる。いま目の前で起きている事象を、歴史の縦糸や地政学的広がりの中で解釈し、こうではないか、ああではないかと読み解き方を伝えることが、結局のところ、一貫して続けてきた仕事だったように思えるからです。いまSDMという進取の気象に富むファカルティに参画する機会を得、これをぜひ続けていく心算(つもり)です。
政治から孤立した経済現象はなく、経済の利害から自由な権力もありません。いま、眼前にある制度は、その合理・非合理を含め、歴史的背景に照らさずには理解することが本来できないはず。わたしはSDMで、こうした一見相離れた二項のあいだを自由に往来する努力を自らに課しつつ、学生たちにその楽しみを分かち持って欲しいと願っています。
マネジメントとはリーダーシップとフォロワーシップが揃って成り立ち、大勢の人間たちに前向きのインセンティブを与えていくワザなのだとしたら、優秀なリーダーたろうとするにも、フォロワーとして、優れたインセンティブ構造を創案、実施するにも、二項、多項の間を自在に往還する知的運動神経が欠かせません。まさしくそれを涵養する一助となるべく、力を尽くしたいと思っています。
安倍総理の特命をアドホックに受け、こなす仕事が、並行してしばらくは続きます。特技は、強いて言えば睡眠時間を削れること。肉体年齢とは裏腹に、意欲年齢がなかなか年を取らないことの2つのみ。自慢もできぬ強みにせいぜい依りつつ、頑張って行こうと思っています。
専任教員あいさつ「SDMが目指すゴールに向かって」
(SDM研究科准教授 五百木 誠)
4月からSDMの専任教員として着任した五百木(いおき)誠です。私は27年間、民間企業に所属し、一貫して宇宙システムに関連する業務を担当してきました。衛星システムの構想段階から詳細設計・製造・試験・打ち上げ後の運用までのライフサイクルを直接的に担当しました。
その間、SDMの中心的学問でもあるSystems Engineeringの手法を適用しながら、体系的な「モノづくり」の実現に努めてきました。その後は、我が国の宇宙システムがいかに日常生活に活用されているかを一般向けに普及啓発したり、日本製の衛星や衛星利用技術を海外の国々に紹介して相手国で活用してもらうための現地調査や日本との橋渡しをしたりする仕事を行ってきました。これらの仕事を通して、我が国宇宙ビジネスの振興策について考えてきました。
宇宙システムの分野でやってきた経験をベースに、それを如何に抽象化し、分野に依存しない新しい手法や考え方につなげていくか、またその正当性・妥当性をどう評価するかという課題に向けて研究活動を進めていきます。
特にライフサイクルのごく初期の段階で考えたコンセプトが、その後最終的な成果としてどう実現されていくかという点に着目し、それを様々な既存の手法を適用しながら完成させていくプロセスを明らかにしたいと思います。
もともとSystems Engineeringは数多くの個別事例から得られた知見を帰納的に分析することにより体系化された手法です。この手法を現実の課題に適用するには演繹的アプローチが必要となりますので、帰納と演繹の有機的な相互関係を常に意識する必要があります。また「木を見て森も見る」を実現するには、複数の視点を持ちつつ具体と抽象を自在に行き来できる能力が求められます。このように、単に対立する概念を区別するだけでなく、全体を包括して扱うことこそが、理論と現実をつなぐためのポイントだと考えています。
時間的なスケールのみならず、空間的・意味的なスケールを含めて幅広く考えながら世の中の課題を解決する、というSDMが目指すゴールに向かって、心も新たに取り組む覚悟です。
TOPICS
1. 平成25年度3月修了者 学位授与式
2. 第2回イノベーション教育学会年次大会を開催
3. 3月から4月にかけて、PMP®受験対策講座を開催
4. 「第6回新エネルギー活用&持続可能社会研究プログラム」ワークショップ開催
5. MITおよびコペンハーゲン大学との連携協定調印式
6. 「第1回農業・農村・地域活性化セミナー」を開催
7. 仲谷訪問研究員が「やさしい触り心地を感じとる皮膚センサの機能」を解明
ラボ紹介:4月号のラボ紹介は、お休みします。
専任教員からのメッセージ「慶應SDMを去るにあたって」
(SDM研究科教授 佐々木 正一)
慶應SDMがスタートした2008年4月に本研究科に参加し、本年3月に退任する佐々木です。
この6年の間、システムエンジニアリング、ディペンダブルシステム、電子システム安全、等の講義を担当するとともに、修士研究の指導を行ってきました。
もともと、自動車会社でエンジニアとして働いてきたこともあり、教員としては、ゼロからの出発でした。 ただ、会社でも人材の育成、プロジェクトマネジメントは専門の技術開発と並んで大きなウェイトを占めていましたので、慶應SDMでの教育においても役立つ点があるのではないかと考えていました。
  実際に担当した結果は、当初のもくろみは半分程度予想通り、半分は予想外でした。その予想外の部分は慶應SDMが社会という非常に広い対象もカバーしようと試みている点でした。私自身、システムズエンジニアリング手法が社会のデザインに有効かどうか半信半疑でしたが講義を進めていくなかで社会システムを包含してゆくことの重要性、逆にいうと技術システムだけを対象とするシステムズエンジニアリングの限界を理解できるようになったかと、振り返りのなかで納得している次第です。
自動車会社でのエンジニアリング業務から大学という場に身をおいてみると大学が社会の中で果たす役割のなかで大きなものは、社会や技術の方向を示し、そこへ向かう手段を提供することであると6年間の教員経験から考えるようになりました。
慶應SDMではまさにその先端で活動が行われているので、知的な興奮を大いに味わうことができました。あっという間の6年間でしたがこれからも慶應SDMの近くで研究を続けます、私の姿を見かけたら声をかけてください、よろしくお願いします。
(SDM研究科准教授 ヒジノ ケン・ビクター・レオナード)
4月から他大学への移籍に伴い、本ニュースレターでの私からの皆様へのメッセージは最後のものとなります。まずは、慶應SDMでの私の3年間を貴重で有意義な経験に可能としてくれた教員、事務、院生、そして外部支援者の皆様にこの場を持って、深く御礼申し上げます。
振り返りますと、慶應SDMでの3年間は福沢諭吉先生の教えの通り、「半学半教」の毎日でした。「SDM」と初めて聞いたとき、正直なんのことかはっきりわからないイメージがありました。システムとデザインとマネジメントと言う幅広い概念がどのように融合し、学問として成り立つのか、さらには教育方法になるのか、若干不安がありました。2010年の秋口に始めて慶應SDMで特別講義(たしかWikileaksをテーマとしたものだと覚えていますが)を行い、不安がワクワクになりました。野心的で、創造的な大学院に多くの幅広い経歴の院生が学びに集まっているところだな、と関心いたしました。3年たった今も、その初印象は変わりません。
慶應SDMでは本当にいろいろなドメインの勉強をしました。こちらで教鞭を執るまでは自分が二輪車の制御、震災時の衛星通信、「殻を破る」精神構造、「じゃんがら念仏」おどり、地方議会広報などありとあらゆるシステムに関する研究に対して学術的なアドバイスをするとは思っていませんでした。修論・博論の発表会は長い日は朝9時から夜19時まで長丁場で、慶應SDMの業務で一番へとへとになるものですが、振り返ると、幅広い研究成果を間近で聞こえる、大変楽しい時間でもありました。
私が担当した社会科学や政治学の講義に置いても、多く学びました。政治学を専攻してきていない履修者に、どのような情報を、どれだけのディテールで、どのような形で重要な概念やコンセプトを教えるのか、いろいろ悩みながら、自分の知見を研ぎ澄ます機会でありました。もちろん社会人学生などから専門家には思いつかない政治への疑問や視点など、多くの刺激を受けました。
今後は研究も教育も自分の専門分野である政治学に集中していきますが、慶應SDMで得たレッスンは忘れないつもりです。今後の慶應SDMの更なる飛躍を楽しみに、関西から応援していきたいと思います。Good Luck, SDM!
TOPICS
1. 慶應イノベーティブデザインスクール公開講座「幸せな社会を創るには」を開催
2. 慶應SDM-デルフト工科大学TPM連携公開講座「メトロポリス革命ー欧州の視点から」 2014年2月25日(火)開催
3. 佐々木正一教授の最終講義を開催
4. 『システム×デザイン思考で世界を変える―慶應SDM「イノベーションのつくり方」』を発刊
5. 農都共生ラボの活動成果が新刊「農業・農村で幸せになろうよ」に
ラボ紹介:スマートシステムデザインラボ
専任教員からのメッセージ
オリンピックとシステムデザイン

(SDM研究科教授 小木 哲朗)
ソチオリンピックが始まったところでこの原稿を書いている。オリンピック中継をテレビで見ていると、日本人選手の活躍を応援すると同時に、その裏で動いている種々の新技術やシステムにも関心がいってしまう。
スピードスケートの中継では世界記録ラインを合成表示するシステムが導入され、ボブスレーではスピードセンサーから送られるデータをリアルタイム表示するシステムが使われている。またウェアラブルカメラによる選手目線の映像も競技に対する興味を高めてくれる。
オリンピックではこの他にも、開会式を演出する映像システムや、試合結果をリアルタイムでテレビやインターネットに送信するリザルトシステム、スマートフォン向けの情報配信システム、チケット販売を管理するチケット販売システム等、大規模で複雑なシステムが稼働している。これらのシステムは数週間の大会期間中だけの運用ではあるが、全世界が注目するため、失敗やエラーは許されず、システムの信頼性は非常に重要な課題になっているであろう。大会を支えるシステムとしては、これらの情報システムだけではなく、観客に対する移動や宿泊、案内を支援するための設備やインフラも重要なシステムと言える。
1964年に開催された東京オリンピックの際には、新幹線や高速道路の交通インフラやホテルの整備、テレビの普及、コンピュータのリアルタイムシステムの開発等、多くの新しい技術やシステムが導入された。あまり知られていないが、外国人向けの案内情報として、トイレのマークでおなじみのピクトグラムが導入されたのもこの時である。2020年には再び東京でのオリンピック開催が決定されたが、それに向けてクラウドコンピュータ、8K映像、AR等の新しい技術を駆使したシステムの検討が始まっている。選手の育成とともに、来る東京オリンピックに向けて、日本らしい"おもてなしシステム"が開発されていくことにも、注目していきたい。
TOPICS
1. 白熱対談「公共哲学×システムデザイン・マネジメント 21世紀の平和をデザインする」 を開催
2. 「エンジニアリングシステムズ」日本語版出版記念シンポジウムを開催
3. 「宇宙インフラ活用人材育成のための大学連携国際教育プログラム」活動報告セミナーを開催
ラボ紹介:モデル駆動型システム開発ラボ、可視光通信ラボ
研究科委員長兼研究所長からのメッセージ
マネジメント元年

(SDM研究科委員長・SDM研究所長 前野隆司教授)
明けましておめでとうございます。2014年のSDMは「マネジメント」の年。
2012年はデザインプロジェクトやKiDS(慶應イノベーティブデザインスクール)の活動に注力した「デザイン」の年、2013年はシステムズエンジニアリングやシステム思考に注力し慶應システムズスクールの活動を開始した「システム」の年と位置づけてきました。そこで、今年度は、SDMの三つ目のキーワード、「マネジメント」にフォーカスしたいと思うのです。では、マネジメントにフォーカスするとはどのような意味でしょうか。
一つは、マネジメント関連の教育・研究にフォーカスするということです。これまでも、プロジェクトの運営、組織の経営、システムの運用、イノベーティブな新規事業の運営等、多様な意味でマネジメントに関わる教育・研究を行ってきました。そこで、今年度はこれらを集中的に強化する年にしたいと思うのです。そのひとつのシンボルとして、マネジメントデザインセンターの活動をこれまで以上に活発化したいと思います。
もう一つは、慶應SDM自体のマネジメントの強化です。これまでも、教員・学生・関係者それぞれの強みを活かしつつ、力を合わせて慶應SDMの運営を行ってきましたが、今年は、これまで以上に連携と協創を強化する年にしたいと思います。つまり、それぞれがそれぞれの強みを深めるのみならず、それぞれの強みを組み合わせることによっていかに相乗効果を出すか。「システムとしての慶應SDMの未来デザイン」をいかにマネジメントするか。SDMの幹を皆で太くしながら、それぞれが世界最先端の教育・研究を行っていく。そんなマネジメント元年にしたいと思います。ご協力、ご鞭撻、どうぞよろしくお願いいたします。
TOPICS
1. 1月11日 慶應SDM 5周年記念イベントを開催
2. Open KiDS特別編 「イノベーション創出のためのワークショップ」を開催
3. 留学報告会を開催
ラボ紹介:宇宙システムラボ