声
在学生

無秩序で多様な私の感覚的な経験を
統一された論理的思考のプロセスに対応し
再構築できる場所、それがSDM
櫻井 智明(2010年春入学) 青森県立三沢高等学校普通科卒業
航空自衛隊、技術専門商社、衛星通信会社、インターネット業界を経て、現在(株)ナノオプトニクス・エナジー在職中
私は今までいろいろなところで、数多くのプロジェクトに携わってきました。数を重ねることで、経験と知識を得ることができましたが、積み重ねられた知識は、あくまでも経験の範囲であり、自分なりの限界を感じていました。そんな時、前研究科委員長の狼先生とお話しする機会があり「既存システムの限界は大規模プロジェクトの限界である。大規模かつ複雑なシステムを構築する手法が必要である」という事をお聞きし、木も見て森も見るという視点を持つことの重要性を聞いたとき、今こそ自分の経験を体系立てて整理し、新たな視点を得ることが必要だと思い入学することにしました。
システムデザイン・マネジメントという研究科は世界的にも珍しく、どんなことを学ぶのか多少なりとも不安だったことを覚えています。最初はそれぞれの講義がどのように繋がるのか想像できませんでしたが、講義終了後クラスのメンバーと議論したり、お互いに教え合うことで、徐々に点から面、面から立体的に感じられ、綿密に作られた体系が理解できるようになるプロセスは自分の知的好奇心が満たされるものでした。
システムデザイン・マネジメント研究科で学ぶことは大きく分けて、「システム思考」、「デザイン思考」、「マネジメント思考」と考える事が出来ます。通常の業務で得られる経験や知識を再構築し、体系立てるだけではなく、社会システム全般を理解し、科学的、論理的な思考を身につけることで、新しい視点が生まれ、今まで以上の価値を生み出す、そんな気がしています。
惜しむらくは一日が24時間しかないことです。
研究テーマ―Dual useコンセプトによる宇宙状況認識システムのデザイン
私が所属している会社はいくつかの大学との共同研究を行っています。
その中で、名古屋大学、京都大学と共同で3.8m光学赤外線望遠鏡を開発するプロジェクトがあり、この光学赤外線望遠鏡を宇宙状況認識システムの一つである「宇宙デブリ」の観測に使えないかということを視野に入れています。具体的には「Dual useコンセプトによる宇宙状況認識システムのデザイン」です。これは複数の企業あるいは団体が同じシステムを利用する際に、どのようなアプローチでシステムをデザイン、構築、運用すれば全体最適化できるかということを研究しています。
また、このテーマを中心に、安全保障領域やエネルギーシステムについても研究しています。しかしながら、懐の広いSDMにおいては研究対象に制限はないので、SDMで学ぶいろいろな手法をつかって、多種多様な問題解決するプロセスは非常に興味深いものがあります。
SDMの社会的価値
SDMは教育の場だけではなく、企業、団体との共同研究も行っており、その分野も広がっているようです。共同研究等を通じてSDMのフィロソフィーが理解されると社会に影響を与えることが可能になると思います。
また、企業から派遣されている学生をはじめ、社会人が多くいることは、部分最適から全体最適を考える事、これは簡単のようで非常に難しい視点であり、社会全体に受け入れられるには時間がかかることかもしれません。
異なるバックグラウンドをもったメンバーとの共同作業
ALPSという約6ヶ月にわたるプロジェクトはいろいろな意味で興味深いものでした。2010年のALPSでは企業から提案されたテーマを展開し、新しいサービスや製品を考えるというもので、私のチームは「防災における再生可能エネルギーの可能性」というテーマでした。自然現象、自然災害、被害と影響を分析し、実際のメガソーラー発電施設や水力発電施設の他、風力発電、太陽熱利用を研究している足利工業大学へ取材を行いました。最終提案時にはCOTSによるプロトタイプを製作し、発表等を行いました。異なるバックグラウンドをもったメンバーとの共同作業は大変なこともありましたが、このような時間は貴重な経験となるでしょう。
また、メンターの企業とはALPSが終わった後も良い関係を継続しており、ALPSの発表以降も新しい展開が始まっています。
このほか、目の不自由な方と晴眼者が一緒に映画を楽しもうという研究プロジェクト「Movie in the Dark」がありました。私が文化放送でパーソナリティをやっていた経験があったこともあり、音声ガイドのナレーションに急遽抜擢され、このプロジェクトに参画することになりました。通常の音声ガイドはヘッドフォンから音声が流れるものですが、このプロジェクトは通常の映画音声の隙間にガイドを行うということで、伝えたいことが多いのに、使える隙間は短いという難しい問題や、映画全体のバランスを壊さないようにガイドを入れなければならないという難しい問題もありました。書き起こした原稿の修正や言葉選び、感情のコントロールなど、プロの映画音声の方とのやりとりは緊張の連続でした。実際に協生館の藤原洋記念ホールで映画を上映し、映画を体験した方から喜びの言葉を頂いたときは感慨深いものがありました。
だれかの研究に協力することで、自分自身の知見も広がるのはまさにSDMならではのものだと思います。
懐の広い、応用の広い大学院
面白い講義はいくつもありますが、一番興味深かった講義は「システムの科学と哲学」でした。システムは人間が作るものであり、人間が作るからには何らかの意思や意図がシステムに織り込まれているのかもしれない、という個人的な謎が明らかになればという思いと、ちょうどNHKでマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」が放送されたこともきっかけでした。もちろん期待通り面白い講義で、グループワークでのディスカッション、中間発表、最終発表までのプロセスはいろいろな視点で考える経験は自分自身を見つめ直すきっかけにもなり、貴重なものとなりました。
また、SDMの面白さとは所属する研究室だけで閉じこもるのではなく、自分の研究をいろいろな教員から多角的な視点でアドバイスを得られることだと思います。
それだけ研究する分野が広く、深くなりますが、このような懐の広い、応用の広い大学院はまだSDMだけだと思うので、これを上手く使わない手はありません。
