声
教員
小木 哲朗(おぎ てつろう)教授
元・筑波大学 大学院システム情報工学研究科 准教授。専門分野:ヒューマンインタフェース、バーチャルリアリティ、臨場感コミュニケーション、ビジュアル・シミュレーション。著書に「サイバースペース入門」(日本実業出版社)、「シミュレーションの思想」(東京大学出版会)等がある。
SDMは、いろいろな視点で物事を考える
ことができるマルチプレーヤーを育てます
人間が使いやすい情報・メディアシステムを実現
私が行っている研究は、コンピュータを始めとする情報システムやメディアシステムを人間にとって使いやすいものにしようというヒューマンインタフェースが研究の出発点です。特に最近では、3次元映像や五感情報を用いたバーチャルリアリティ(VR)技術やオーグメンテッドリアリティ(AR)技術、あるいはネットワークを介したインタフェースであるテレイマージョン(高臨場感通信)技術等が主な研究の対象となっています。これらの研究分野はコンピュータに関する知識だけではなく、心理学や生理学等の人間に関する知識から、応用領域に関する知識まで幅広い分野と関連します。そのため研究方法としては、情報システムとしての技術開発だけではなく、人間を対象とした研究、応用分野からのアプローチ等、いろいろな視点からの研究が必要になります。最近では情報システムが関係しないシステムは考えることができなくなってきたため、応用分野はますます広がっています。
高齢者ドライバーが安全に運転できるように
西村教授と行っている研究は損害保険会社との共同研究で、高齢化社会において多くの高齢者ドライバーの安全運転力を維持するにはどうしたらいいかという問題に対して、高臨場感ドライビングシミュレータを用いた高齢者の安全運転トレーニングを行うことを目的とした研究です。西村教授のところでは自動車の制御技術に基づいた車両のシミュレーションを行い、私のところではシミュレーション計算に基づいたインタラクティブな映像生成を担当しています。
研究の進め方としては、まず実車運転に相当するリアリティの高いシミュレータを実現し、シミュレータを用いた被験者実験から高齢者の運転特性を分析し、その上で安全運転力を維持するためのトレーニング手法を確立することを目指しています。従来の理工学部で行う研究とは異なり、技術開発が最終目標ではなく、社会問題に対する解を得ることを目的としているため、まさにSDM的なアプローチの研究と言えると思います。
常に世の中の要求や社会への展開を意識する
ムーアの法則で知られるように、情報システムやメディアシステムは技術の進歩が非常に早い領域です。そのため、研究におけるアイデアの実装が遅れると多くの競合相手が現われ研究の価値が半減してしまうことも稀ではなく、得てして研究のための研究、実用化を無視した研究が多く行われていることも事実です。SDMではどのような研究対象に対しても、常に世の中の要求や社会への展開を意識した問題の捉え方が浸透しており、先端的な技術開発を行いながらも常に広い視点で、地に足を着けた研究開発を行うことができる場だと思います。またそのためには、自分の研究領域だけの閉じた世界で考えるのではなく、他のいろいろな視点からのモノの見方を学ぶことも重要です。SDMはそういう意味でも研究者間、研究室間での共同研究や協力が行える良い環境が作られており、この点も大きな魅力の一つだと感じています。
手を動かしてから考える、考えてから手を動かす
SDMでは「木を見て森も見る」の精神を教育の柱としていますが、これを実行することは容易なことではありません。「木を見る」には一人で集中して思考や実験を繰り返すことが必要であり、「森を見る」には他者との議論から思考を広げていくことが必要です。この両者は研究に対する姿勢や行動様式が大きく異なります。森を見る訓練はグループ演習等で繰り返し行われますが、木を見る訓練は各自が自分で意識して行うしかありません。特に広い視点でモノを考え出すと、細かい問題をじっくり考える余裕が無くなってくるものですが、木を見るという行為は考える事だけではありません。むしろ自分の手を動かしてモノを作ってみる、自分の足を動かして調べてみるという姿勢が大事だと思います。人や文献から情報を得るだけではなく自分の手と足を動かして始めて問題も見えてくるものです。「手を動かしてから考える、考えたらすぐ手を動かす」という姿勢を忘れないで下さい。
真の研究、教育の実践
本来、研究や教育の方法論というものは普遍的なもので、自分がどこに所属していても変わるものではないはずですが、現実はそうではありません。多くの組織では、縦割り構造の中で自分の存在価値を求めるあまり、各人の視野はどんどん狭くなっていくのが現状です。SDMはシステムデザインという共通の目的のもとに、文理融合、メルティングポットという多様性を持った横断的な組織が作られており、真の研究、教育を実践していくことが可能な場として期待し、また目指していきたいと思っています。
