教員

SDMは、グローバルに活躍する人材が育つ
マルチカルチャーの場を提供しています。

中野 冠(なかの まさる)教授

元・株式会社豊田中央研究所。専門分野:製造型企業のシステムとビジネスプロセスのデザイン。

大学時代はオペレーションリサーチを専攻

私の研究分野は一言で言えばシステム工学で、大学時代の専門分野はオペレーションズリサーチ(経営科学)でした。これは戦略、戦術を支える管理の研究で、具体的には、ボトルネックの検出、システムのパフォーマンスを測る数理最適化、サプライチェーンによく使われる待ち行列理論などの応用数理を扱っていました。

全体最適を目指して、生産システムだけでなくサプライチェーン全体を研究

トヨタグループ企業に就職後は、トヨタの生産システムのシミュレーションモデルの構築による生産システムの最適化の研究していました。最適化のためには、生産システムだけをローカルで最適化するのではなく、他と関わっている部分も含めて最適化する必要があります。そこで、生産システムから、製品開発、設計や物流を含めた生産過程のサプライチェーン全体を研究するようになっていきました。さらに、生産過程のみでは全体最適化は達成できないことがわかり、消費者の購買行動を誘発する生産システムや設計の姿を考える、つまり、マーケティング、販売企画、ブランディング、CSRまで研究対象が広がりました。その間、欧米との国際共同研究を通して、グローバル社会で日本のものづくりが生き延びるための施策、日本の固有の特性を生かす方法も数多く研究してきました。

一企業の行動から社会問題へ研究対象を拡大

企業の存続を前提に長期需要予測をたて、どのような商品やサービスを投入するべきかという長期ビジョンを構築するためには、社会全体を考える必要性があるということに行き着きました。そこで、会社の経営戦略や技術戦略の立案のために、環境、エネルギー、資源や、社会インフラ、例えば、都市構造や交通システム自体の研究を行うようになり、研究対象が広がっていきました。

授業では企業での経験を教える

私の授業では、私自身の企業での経験から、システム管理技術、環境システム論、そして国際標準化論を教えています。システム管理技術では、製品開発から物流までのマネジメントを、環境システム論ではシステムを取り巻く環境、つまり、消費者行動やマーケティングから、エネルギー、資源、地球環境や少子高齢化、都市構造まで幅広く教えています。国際標準化論では標準化の仕組みを教えています。日本は要素には強いもののシステムには弱い場合が多いですが、外国ではシステムの標準化によって中小企業の参入を可能にして、大企業がサプライヤーを抱え込むことによって、ビジネスイノベーションが起きています。

SDMでの研究指導

私の研究室には多くの学生がいますが、背景も興味も多様です。社会人学生、新卒学生、留学生の興味は多少異なります。社会人学生の多くは、私のトヨタでの経験を重視して、マーケティングやビジネスプロセスエンジニアリングを中心に研究しています。新卒学生は、一般に企業のことは詳細には知らないこともあって、環境、資源、エネルギーなど、社会問題に関するテーマに興味をもつことが多いです。留学生は、国際的にブランド力のある日本のものづくり、トヨタの生産システムと、グローバルに活躍する人材をめざして複数の企業が1つの企業のように振る舞うグローバルサプライチェーンなどに興味を持つ者が多数派です。
どの学生にも、将来を見据えて現業で生かせるスキルを身につけさせる指導を行っています。

SDMの国際連携で多文化経験を提供

私は、SDMにおける文部科学省先導の国際化推進プロジェクト・グローバル30のリーダーを務めています。勉強内容の面では、留学するとSDMの高レベルの授業を休まざるを得ないというデメリットもありますが、日本では味わえない多文化経験、つまり多様な考え方と交わり、グローバル言語で討論する経験は極めて重要です。海外の大学にはマルチ環境があります。たとえば、香港科学技術大学の先生を訪問した時に非常に感銘を受けました。そこでは博士や修士の学生と討議しましたが、留学生がフランスから2人、イタリアから2人おり、中国人学生は全員留学経験がありました。香港ですから、皆さん英語はしゃべれる状態で、非常にモチベーションが高い討議でした。社会に出て、このような人たちと一緒になると、国際経験不足の日本人は太刀打ちできないと感じました。
とはいうものの、もともと日本で基礎教育を受けた者にもポテンシャルはあると思います、ある意味では。ある意味というのは、日本の教育にも優れた面が少なくなく、幼少時からどの教科もバランスよく勉強しているので、日本で学んだ学生は全般的に基礎ができていますし、いろいろなことをスケジュール通りにきちんとこなす能力も身につけています。一方、オープンな国で育った人々は、英語力に加え、マルチカルチャーのマインドを持っている。国際社会でビジネスをする際には、この差が大きく影響するということを、若い人に理解してもらいたいですね。

SDMの設立のコンセプトに、世界で活躍できるプロジェクトマネージャー、あるいはシステムズエンジニアの育成がありますが、学生には、SDMのマルチ環境の良さを充分活用し、留学することももちろんですが、留学生や海外からの多様な先生たちと積極的に交流し、この経験を活かせる道に進み、早くマネージャーになって活躍してほしいと期待しています。