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SDM Voice|春山 真一郎教授(SDM教員)

アメリカで学び、働いた経験を生かし、SDMでは「顧客に学び、社会に役立つ」授業や研究を手がけている春山真一郎教授。「学問」の領域にとどまることなく、より実用的な「提案」や「開発」につなげるため、どのようなことを心がけているのか。その思いを伺いました。

Profile

春山 真一郎(はるやま しんいちろう)

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

元・慶應義塾大学理工学部訪問教授。専門分野:ユビキタス社会におけるトータルなハード・ソフト・通信システムのデザイン。著書に「可視光通信の世界」(工業調査会、第2章)等。

社会にどう役立つか。それを具体的に意識する

SDM研究科は、もともとシステム全体、つまり、情報、通信、メディア、ハードウエア、サービスから、人間、組織、社会、地球環境まで、あらゆるシステムを検討する、という大きなテーマを掲げています。私の研究室でも、「こんなことやシステムが実現できたら、社会に役立つ」ということを強く意識した研究に取り組んでいますが、新しいアイデアを“わかりやすく示す”ということを非常に意識しているので、比較的、理解しやすい研究が多いです。説明しやすい手法のひとつとしてプロトタイプをつくることも多くあります。今手掛けているのは、「新幹線でも利用できる高速通信技術」や「GPSが届かない屋内でも、光を使って位置情報を特定し、案内できるナビゲーションシステム」「視覚障害の方でも使えるナビゲーションシステム」などです。

重視しているのは、単に“新しいものを作る”ということではありません。例えば通信やコミュニケーションの研究だったら、「誰のための通信なのか」「どういうサービスを提供するのか」というのを非常に意識し、最初に「そのためにはどういう技術が必要で、その技術が実現すると、どういったサービスをどういった人たちに提供できるのか」ということを徹底的に考えます。そして、次に「それを実現するにはどういう要素技術が必要なのか」を考え、アイデアを出し、試作するのです。少し、理工学部に通じる部分もあるかもしれませんが、より社会のニーズを意識するという側面があるように思います。

大切なのは、「自分の興味」より「顧客の意見や要求」

社会のニーズを意識するというのは、「顧客がいかに大切か」ということでもあります。私はかつて、15年間アメリカで過ごしましたが、そのうち約半分の期間は働いていました。技術者として、さまざまなものづくりをしましたが、単に自分の興味があるものをつくるだけではお客さんの興味と離れてたものができてしまい、キャンセルになってしまうということをいくつも経験しました。それによって、「お客さんの意見や要求を聞く」というのが、いかに大切かということを身にしみて感じたのです。それが今につながっていますね。SDMで行っている研究も、必ず、ユーザーやステークホルダーの意見を聞きに行くというところから始めています。今、その人たちにとって何が問題なのか、ということを明らかにすると大抵うまくいく。学生にもそうアドバイスしています。

半学半教で刺激しあい、社会に直結する研究を

今、授業では、ソフトウエアデザインプロセス論とバーチャルデザイン論、起業デザイン論、そしてアントレプレナーシップを担当しています。

ソフトウエアデザインプロセス論とバーチャルデザイン論は“ものづくり”の授業です。ソフトウエアデザインプロセス論は、顧客の変更依頼や意見などを取り入れながら、迅速かつ適応的にソフトウエア開発を行う「アジャイルソフトウェア開発」を、実践を交えて行っています。専門的に聞こえますが、プログラミング言語をまったく知らない人でも受講可能です。アジャイル、つまり突然の変更に対してどう対処したらいいかというところに主眼が置かれているので、文系の人でも面白いと思います。バーチャルデザイン論は、三次元的な形あるものを作る方法論で、小木哲朗教授と担当しています。例えば、椅子がテーマだとしたら、「まったく新しい椅子」をつくるということにトライします。さまざまなユーザーに「今の椅子」に関する悩みやニーズを聞き出し、新たにマーケットを生み出すような「まったく新しい椅子」を一から設計する。そして実際につくったものをユーザーに見せて意見をフィードバックしてもらい、改良する。ものづくりが好きな人はもちろん、「ものづくりの開発プロセス」を知りたいという人にもいいと思います。

起業デザイン論やアントレプレナーシップは、新卒の学部生からすでに起業している人まで、さまざまな受講生がいます。最初の授業では、資本金500円を渡して、それを外で何倍にできるか、というワークをやります。500円を5000円にするのはやさしいですが、100万円を1億円にするのは非常に難しい。そういったことを学んでいただき、最終的には事業計画書を書いて発表してもらっています。いずれの授業も非常に実用的な取り組みをしていますね。SDMに在籍する間にいろいろ学んで、そのまま社会で役立つような研究にチャレンジしたり、卒業後に起業するような意欲的な学生がさらに増えてほしいと思います。

SDMが目指しているのは、慶應義塾の創立者、福沢諭吉先生が提唱した「半学半教」です。さまざまな学生が集うので、教員側も、日々ものすごい勉強しながら教えています。教員も学生も一緒になって学び、成長する場所になっていますね。